VTuberならそれは前提なんですけど
ところで、矢車ちゃんが希望するノートパソコンを買ってあげた。動画編集が楽にできる、32GBでCore Ultra7のやつ。防音室もちゃんとしたのが見つかったとのことで、その分のお金も振り込んであげた。そんな訳で、今日防音室の施工が入り、防音室は無事完成したのだが、しかし矢車ちゃんは肝心の企画が全く思いつかないそうだ。
「どんなのが面白いんですかねえ……」
お昼ご飯のとき、矢車ちゃんがしょげていたので、私は柴胡ロジーの動画を勧めた。
「企画力の高いVTuberをいろいろ見てみたら? 柴胡ロジーは最前線よ」
「どんなのがあります?」
「最近のだと、「【多摩川】鯛で海老を釣る【荒川】」とか、「【最強乳化は】各AI作ペペロンチーノ食べ比べ【どれだ】」とか、「【手芸】手編みのムチを作ろう【パラコード】」とか。見てみたい! と思わせる企画で、見やすい長さかどうかも重要ね」
「うーん、個人勢はそれなりに見るんですけど、企業勢は圧倒的すぎて参考になるかどうか……」
VTuberは、個人的にやっている勢と企業に所属してやっている勢に大別され、企業のほうが認知度を稼ぎやすいし、大きい企画をやるときにサポートが手厚い。弱小個人勢でしかない金銀妖狐は、確かに個人勢から学ぶことが多いだろうけど。
「そんなことないって! 柴胡ロジーの企画は個人でできるやつばっかだし! それに個人から企業勢になる人も逆もいるしさ! えり好みしないで、どんどんインプットしなきゃ!」
「じゃ、とりあえずめぼしいの見てみます……」
「柴胡ロジー以外も見なね。疑似三次だけでもバリエーションものすごくあるから、いろいろ見て、自分はこの方向ならやれそうっていうのを見つけるといいと思う」
「はい」
矢車ちゃんは真剣な顔で頷いた。薄荷ちゃんとヤカは、会話についていけなくてぽかんとしている。
「サイコロジー? 個人勢? 企業勢? ぎじさんじ?」
{私もよくわからないのだが……}
「ああ、説明する、ごめんごめん」
私が手短に解説すると、ヤカは理解したようだったけど、薄荷ちゃんは根本的な所を理解していないようだった。
「かわいい格好でおしゃべりしてるだけじゃダメなんですか?」
私は言い切った。
「それは前提。VTuberなら」
矢車ちゃんも言った。
「かわいい格好でおしゃべりは、ガワがあれば誰でもできることだから。その上で、しゃべりが面白いかとか、実況が面白いかとか、面白い企画をしてるかが大事なの」
薄荷ちゃんは目をぱちくりした。
「なんか、すっごく難しそう」
「難しいよお〜」
矢車ちゃんは天を仰いだ。まあ、難しくても、楽しく続けてくれればそれが一番なんだけどね。




