一応丸く収まったんですけど
先にゆずさんと仙さんがやってきたので、私は「仙さんは見てるだけです。ゆずさんに動いてもらいます」と釘を差した。まあ、娘1人でやらせられない気持ちは分かるけどね。
で、棚の引き渡しは滞りなく済んだ。なんで一晩で棚12個も引き取り手がついたんだろうと思ったら、棚12個欲しい人がいたみたいで。軽トラでやって来た引き取り手の夫婦はうれしそうだった。
「引っ越し先にたくさん本棚を置きたくて、ここのが奇跡的にぴったりでして」
「それはよかったです」
ゆずさんと夫婦で棚を運び出してもらって、何往復かで棚は全部なくなった。私は広々とした遊戯室をヤカと眺めた。
「これでなんとかなるかなあ、実家の荷物」
{ある程度は何とかなるだろう。力仕事ならいくらでも引き受ける}
「ありがとうね」
で、ゆずさんは夫婦からお金を受け取って見送り、「6000円あります」と私に差し出してきた。私は受け取って確認した。
「はい、確かに。で、私があなたに言ったのは、お酒を売って処分して売り上げを耳そろえて私に渡すことと、棚を処分することね」
「はい」
「棚の分の売り上げは含まないよね」
「はい」
私の念押しに、ゆずさんは不思議そうに頷いた。
「だから、棚の分の売り上げはあげる」
私が6000円を差し出すと、ゆずさんは目をまん丸くした。
「え、いいんですか!?」
仙さんもびっくりしている。
「それだとうちの娘の罰になりませんが!?」
私は言った。
「ま、警察に事情聞かれた上に働かされて、いい薬になったでしょう。で、棚の売り上げ分は契約外だから、バイト代ってことで」
書面には棚の売り上げのこと、なんにも書かなかったしね。
ゆずさんはおずおずと6000円を受け取り、ホッとしたようにため息をついた。
「あの……いきなり押しかけてすみませんでした……」
「これに懲りたら、後先考えずに動くのはやめなさいね」
「はい……」
「私みたいに、労働で許してくれる人ばかりじゃないんだからね」
「はい……」
ゆずさんは改めてしゅんとした。仙さんが言った。
「すぐ融資してくださって、本当に助かりました」
「貧乏神さんは追い出しました?」
「やりました、どれだけ効果があるかはわかりませんが」
「返済期限間に合わなかったら延ばしますし、それでもまずかったら追加融資も検討しますから、まずは相談してくださいね」
すると、私の手をつかむ小さな手があった。座敷童子ちゃんが、いつの間にか私の手を握っていた。
[あたちは戻る気ないけど、貧乏神がいなくなったなら、大きな失敗は起きないと思うのだ。せいぜい誠実な商いをするのだ]
「はい……若い人を育てます……」
仙さんもしゅんとした。
で、ことは済んだので仙父娘にも帰ってもらい、座敷童子ちゃんはどっかに消え、私は大きく息をついた。
「終わったー! 疲れたー!!」
なんでこんなトラブルに巻き込まれなきゃないけなかったわけ!?
ヤカが私の隣に来た。
{お疲れ様}
「ヤカもありがとね、変なことないか見張っててくれて」
{どうということはない。疲れたなら横になっていてくれ、昼食のリクエストはあるだろうか?}
「甘いものが食べたい!」
{では、フレンチトーストと、さつまいもとりんごのサラダを作ろう}
「わーい! ありがとう!」
やっとのんびりの休日を過ごせる!
虚弱無職、毎日が日曜日みたいなもんだったけど、平日は矢車ちゃんと薄荷ちゃんへの指示出しがあるし、先週の休日はトラブルで潰れたし、ヤカと二人だけの休日は、本当にのんびりって気がする。一眠りして、ご飯を食べて、あとは柴胡ロジーの配信アーカイブをゆっくり見ようかな。




