ただ処分するよりはSDGsなんですけど
古酒買取業者さんたちは、3連休でウイスキーを全部運び出してくれ、休日が明けたらお金の振り込みもちゃんとしてくれた。
そんなこんなで平日。仙さんと融資の手続きに行ったりなんだりし、疲れた。薄荷ちゃんと矢車ちゃんに土曜日の騒動を愚痴ったら、2人とも驚いていた。
「そんなことがあったんですか」
「大変でしたねえ」
私はため息をついた。
「もうめちゃくちゃ疲れた……あっ、これは金銀妖狐の話題にしちゃダメよ、古酒業界の人が見たら簡単に特定できちゃうから」
「はい!」
矢車ちゃんは居住まいを正した。
「あ、でも、がめつい見栄張りババアが親戚の小娘に失礼されてド叱った後、落とし前付けさせるためにタダ働きさせてる、なら言ってよし」
「それはいいんですか!?」
「ネタ欲しいでしょ?」
「欲しいですけども!」
ヤカが言った。
{あとは棚の処分か。だいぶかさばるが}
薄荷ちゃんが私を見た。
「私たち、棚の解体くらいやりますけど?」
「ううん、ゆずさんにやらせて責任取らせないと。ヤカ、あの棚、別に高価なものじゃないよね?」
{特には。掛川氏がAmazonで安く買った棚ばかりだ}
「よし、じゃあ売るってこともないかな」
そう思ってたんだけど、金曜の夕方にゆずさんが館に来て、恐る恐る提案してきた。
「あの、ジモティー見たら、結構棚が欲しい人っているみたいで……欲しい人に引き取りに来てもらうのはどうかなと……ただ解体するより、格安でも引き渡した方が得かと思うんですけど……」
あー、その手があったか。しかし。
「それ、お父さんのアドバイス?」
「その、ジモティーはお父さんですけど……ただ壊すのはもったいないと思ったのは私で……」
「ふーん」
なるほどね、まあ、よしとしますか。私は言った。
「じゃあ、ジモティーで募集していいよ。ただし、男性として募集してね」
「え? なんでですか?」
ゆずさんは当惑し、私は、この子世間に擦れてないなあと思いつつ言った。
「女だってだけで、変な人が来やすいのよ。男って言っとくだけで来ないなら、儲けもの」
「そうなんですか……?」
ゆずさんはピンときてなさそうだった。ヤカがそろそろと私の隣に来た。まだゆずさんに慣れてないな。
{不逞の輩が来たら、私が縛り上げるが}
「不逞の輩が来ないに越したことないでしょ。でも取引の時は変な人じゃないか気をつけて見ててね、姿を現せとは言わないから」
{了解した}
で、私はとりあえずゆずさんを館に上げ、棚の写真を撮らせてジモティーで募集させた。
「棚ひとつにつき500円でいいから。ひとつずつ募集しよう、ぜんぶで12棚ね」
「は、はい」
棚寸法もあった方がいいだろうと思って、ヤカにメジャーを持ってきてもらってゆずさんに寸法をとらせ、それも募集内容に追記させた。
で、一夜明けて土曜日。なんと、全部に引き取り手がついたとのこと。朝7時、ゆずさんのLINEからはこう来た。
「引き取りのとき、私いなきゃいけないんで早くに館に行ってもいいですか?」
「OK、私も準備しとく」
やれやれ、あとは変な人がこなければなんとかなりそう。ヤカにも朝早くからの稼働になることを伝えると、{では、すぐ食べられるものにしよう}と、朝食にBLTサンドを出してくれた。レタスぱりっぱり、ベーコンの濃い塩気がたまらない。
「おいしいー、トマトがジューシー」
{急場で作ったものだが、気に入ってくれてよかった}
茶葉2倍練乳ドバ入れミルクティーも飲んで、お腹をあっためて、準備は完璧。あとは、来る人を待つばかりだな。




