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お館様の代理人 呪いの館を相続したはずが館にめちゃくちゃ世話焼かれてるんですけど!  作者: zingibercolor
4章

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落とし前はきっちりつけさせるんですけど

 仙さんはぽかんとした。


「染み込んでる人……?」


 ゆずさんも、何が何だかわからないという顔をしている。私はヤカに声をかけた。


「ねえ、ヤカ、今染み込んだり出てきたりしてもらってもいい? 嫌?」

{あまり気は進まないが……やろう。事情を説明するには、それが一番早い}

「ごめんね、無理させて」

{あなたの頼みなら構わない}


 ヤカは見る間に透明なスライムになり、玄関の床に染み込んだ。仙さんもゆずさんも目を剥いた。


「ええ!?」

「な、何!?」


 次に私の斜め後ろに透明なスライムが盛り上がり、一瞬でヤカ(人型)になった。私は仙さんに言った。


「まあ、館に染み込んでる人でお館様です。私はヤカって呼んでます」


 ヤカはまだ微妙に私の後ろに隠れたそうだったが、仙さんを微妙に警戒する気持ちもあるようで、一歩だけ、私より仙さんの近くに位置取った。

 仙さんは目も口も真ん丸にしていたが、やがてうめいた。


「館……父を魅入らせたのはお前か!? 館のせいで、館のせいで父は母を捨てて……! だから壊そうと思って……!」


 なになに、何があったの!?

 ヤカを見ると、ヤカはかなり固くて低い声で言った。


{魅入らせた覚えはまったくないが、それはそれとして真希氏の祖母には負い目がある、そのことは話しておく}

「どうしたのヤカ、何があったの?」


 仙さんが言った。


「父は……父はこの館を気に入りすぎて、館があればいいからと人を近寄らせなくて……母もそれで追い出されて……」

{私は人が多いほうがよかった。館を壊されたくないから掛川右京氏の世話をしていたが、館を大事にして住んでくれる人なら、追い出す理由はまったくない}

「じゃあなぜ母を……」

{……あのときは、いいことをしたつもりだったんだ}


 ヤカはうつむいた。私は聞いた。


「何があったの?」

{あなたの祖母が掛川右京氏と離婚した理由だが、右京氏の主張としてはあなたの祖母が勝手に右京氏の金を使ったからということになっている}

「え、でもおばあちゃん専業主婦よね?  使っちゃいけないお金ってこと? それともケチってこと?」

{掛川右京氏の自認としては、ケチではなかった。用途を言えば、何でも金は用立てたから。しかし……あなたの祖母が自由にしていいお金は、一円たりともなかったんだ}

「ええ……」


 それは……きついな。

 ヤカは仙さんを見た。


{小学校5年生の時に、いきなり母親にデパートに連れて行かれたことがあっただろう?}

「た、確かにそういうことはあったが」

{私は館で起こったことを全て見ていたから、お前の母親が気の毒だったんだ。右京氏が栞に使って忘れていた1万円を、こっそりお前の母がわかりやすいところに置いた。好きなものを買ってくれればと思っていたのだが、お前の母親は子供たちをデパートに連れ出すのに1万円を使った。そんな金を渡した覚えがない右京氏は金を盗んだと激怒して……お前の母親を追い出して離縁した}


 仙さんは信じられないようだったが、思い当たることはあったようだ。


「確かにデパートに連れて行ってもらった……その後、父が金を盗んだと激怒して母を追い出したんだ……」


 私もびっくりした。


「おばあちゃん、そんなことあったんだ」

{そういう訳で、私に責任はある。しかし、館を壊されたら行く場所がないから、館に暮らし続ける意志が固い右京氏の面倒を見ていただけで、それで魅入らせたと言われたらたまらない}

「……それは、そうかもしれないが……」


 仙さんはものすごく納得いかなそうな顔はしていたが、ヤカがこの館にずっと染み込んでた存在と言うのはあっさり飲み込んだようだ。そうね、これだけのエピソードがあればね……。

 ゆずさんが仙さんのところにやってきて、彼の腕をつかんだ。


「パパ、ごめんなさい……」

「牧之原さんに謝りなさい」

「本当にごめんなさい……」


 ゆずさんは私に頭を下げた。私はヤカを見た。


「ヤカ、そういうわけだけど、どうする?」

{あなたにも館にも危害がないなら、特に何かする気はない。しかし、二度とこういうことはしないでほしい}

「そう、ならよかった」


 しかし、掛川右京さんの変なケチもだいぶ家族に影響を及ぼしてたみたいだし、私はあんまりケチでいたくないし、仙さんが本当に困ってるなら援助はするんだけど、無条件で援助したくはないなあ……。

 あ、いいこと思いついた。私は疲れるし、ヤカにもサポートを頼むと思うけど、これをやらせたら館にスペースが空くな。

 私は仙さんに言った。


「今、掛川さんの建築事務所、貧乏神がついたみたいに傾いてません?」

「え、なんで知ってるんです!?」

「まあ噂で……。ゆずさんが落とし前つけてくれるなら、必要な分援助しますよ」


 ゆずさんが「え!?」と目を見開いた。私は念を押すように言った。


「でも、お父さんは動いちゃダメですよ。あくまでゆずさんに働いてもらいます。自分がしたことの責任取ってもらわなくちゃ」


 まあ、いい社会勉強になるでしょう。もちろん、失敗しないように目は離さないつもりだけどね。

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