事情はちゃんと説明したいんですけど
掛川仙さんは土下座しつつさらに叫んだ。
「私の対応が悪くて申し訳ない! 娘に遺産があればとつい言ってしまって! あなたに瑕疵がないのは理解しています! 被害届はやめてください! 娘の学校に話を行かせないでください!」
初手謝罪か……掛川仙さんはまともな人っぽい、まあ娘の経歴に傷をつけないことが第一っぽくはあるけど。でも、悪いのは別に仙さんじゃないんだよね。
私はため息をついて言った。
「ゆずさんから謝ってもらえれば。悪いのは掛川さんじゃなくてゆずさんです」
「ゆず! 謝りなさい!!」
仙さんは土下座のまま頭だけ上げて叫び、ゆずさんは涙を浮かべつつ「ごめんなさい……」とうめいた。
「言っとくけど、あなたのお父さんの土下座の原因作ったのはあなただからね。あなたが全部悪いの」
「…………」
ゆずさんはうつむいて涙をこぼし、警官が困った顔で「お父さんの方でいいので、住所と連絡先を教えてくれませんか?」と言った。まあ、書類とか書くのに必要なんだろうな。
私が「掛川さんはもういいですから、住所とか教えて差し上げてください」と声をかけると、仙さんは立ち上がったものの、立ちすくんでそれ以上近づいてこない。どうしたんだ? と思っていたら、仙さんはおびえた顔で言った。
「そ、その……私はその館に入れなくて……すっすみません、いろいろあって……」
私はヤカを見た。
「ヤカ、掛川さんに何したの」
ヤカは気まずそうに言った。
{そ、その……転ばせたり、物をいろいろ落としたり……重いものを……館を壊されるのだけはなんとしても避けたかったので、骨折くらいまでならいいかと思っていた……}
掛川仙さんは私たちのやりとりを聞いて「?」となっていたが、警官の1人が掛川仙さんの方に行き、いろいろ聞き取って、また館に戻ってきた。
「どうします? 被害届出しますか?」
「親御さん来たしやめときます、あとは話し合いで」
掛川父娘ともうちょっとちゃんと話したいし、本当に困ってるなら、ちゃんと頼んでもらえれば援助くらいするし。
で、警察には帰ってもらって、私は玄関を出て掛川仙さんの方へ歩み寄った。
「私はゆずさんに正式に謝ってもらえればいいんですけど、後はお館様がどう捉えるかですね」
「お館様……父のことですか?」
「いえ」
私は、玄関のドアを抑えて、半分ドアの影に隠れているヤカを見た。
「この館ができたときから、ずっとこの館に染み込んでる人のことです」




