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お館様の代理人 呪いの館を相続したはずが館にめちゃくちゃ世話焼かれてるんですけど!  作者: zingibercolor
4章

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館の住人増えたみたいなんですけど

 恐る恐る書斎のドアを開ける。机の上にも周りの本棚にもファイリングした資料がびっしりの中、机の影にまたひらっと赤いものが見えた。


「あれかな?」

{あれ、とは?}

「え? ヤカ見えない?」

{いや、特に何も……机の裏の床を踏まれている感じはあるが……}


 矢車ちゃん達も見えてない感じだったけど、薄荷ちゃんが言った。


「もしかしたら、薬師如来様の霊薬で人ならざるものを見やすくなってるのかも……」

「そんな効果まであるんだ……」


 私にしか見えないのかな? うーん、薬師如来様が想定してるような存在なら、危険な相手ではないのかな?

 私はそっと机に近づき、机の裏を覗き込み、すると視界の端、椅子の向こうにまた赤いものがひらっとしたので、とっさに手を伸ばしてそれを捕まえた。すると、その場にぱっと小さな女の子が現れた。4歳か5歳くらい、赤基調の極彩色の振袖を着ている。


[うわっ! なんで見えるのだ?]

「なんか見えたのよね……どこの子? あなた」


 女の子は胸を張って答えた。


[あたちは座敷童子なのだ]

「座敷童子!?」


 矢車ちゃんがこわごわ寄ってきて、「本物ですね……」と言った。薄荷ちゃんも来た。


「初めて見ました……」


 ヤカはどうしたのかと思ったら、知らない人の出現にびっくりしたらしくてドアの陰に隠れていた。


「大丈夫よヤカ、こんな小さな女の子怖がることないから」

{しかし……私はあまり人らしい姿をしておらず……}


 座敷童子ちゃんは全然気にせず、ヤカに駆け寄っていった。


[噂は聞いてるのだ。お館様なのだ、マジで館に染み込んでる奴なのだ]

{まあ……そうだが……}

[今日からあたちはここに住むのだ。お菓子とお茶を要求するのだ。代わりに繁盛させてやるから覚悟しろなのだ]


 ストレートな欲求が来たな……。

 私は、座敷童子ちゃんに近づいて声をかけた。


「うちに来てくれてありがとう、どの部屋に住みたい?」

[話が早いのだ、大抵の者はビビるのになのだ]

「薬師如来様から話が来ててね。人ならざるものが集まるからって」

[ふーん、あたちはこの書斎に宿りたいのだ。お菓子が欲しいときは適当に出てくるからよこすのだ]

「そうなの?」


 薄荷ちゃんが私を見た。


「家に宿る妖怪だから、いつもいつでも存在するってわけじゃないんですよ」


 矢車ちゃんが厨房のほうを見た。


「お菓子とお茶用意しましょうか?」

「じゃ、お願い。こないだのお菓子でよさそうなの、たっぷり出してあげて」


 で、座敷童子ちゃんをとりあえず応接間に通して、矢車ちゃんと薄荷ちゃんがお菓子盛り盛りの菓子盆とお茶を持ってきてくれた。座敷童ちゃんは高いフィナンシェをもしゃもしゃ食べ始め、ヤカはついてきはしたものの、私の後ろに一生懸命隠れようとしている。その大きさじゃ無理だってば。

 座敷童子ちゃんはジャムクッキーももしゃもしゃ食べ始めた。私は聞いた。


「あなたは、どこから来たの?」

[掛川仙の家からなのだ。縁をたどってこの館に来たのだ]

「掛川仙……」


 確か、それ掛川右京さんの長男の名前だわ。建築家だっけか。


「え、確かにうちと縁はあるけど……え、じゃあ掛川仙さんの家没落するじゃん!」


 座敷童子いなくなった家って、没落するよね確か!

 座敷童子ちゃんはなんてことないように答えた。


[貧乏神もついたし、もうあそこ終わりなのだ]

「そうなんだ……」


 結構大きな建築事務所開いてたという話だけど、栄枯盛衰だなあ。

 座敷童子ちゃんは菓子盆のお菓子を2/3ほど食べ、お茶も飲み、大きく息をついた。


[お腹いっぱいなのだ]

「満足した?」

[したのだ。部屋に戻って寝るのだ]


 座敷童子ちゃんは応接間のソファから飛び降り、てててっと書斎へ駆けていき、私がなんとなくついていくと、座敷童子ちゃんは書斎に入ってからふっと消えた。


「わあ、本当にいつもいつでも存在するわけじゃないんだ……」


 ヤカが恐る恐るついてきた。


{その、これは勘なのだが、館にお菓子を切らさない方がいい気がする}

「そうねえ、いなくなられて没落は嫌だし……矢車ちゃん達に買い置きを頼んどこ、あと私もいいなと思ったお菓子なるべくUberか通販するわ」


 応接間に戻り、お茶とお菓子を下げに来た2人にそれを頼むと、2人とも頷いた。


「切らさないほうがいいと思います。お菓子多めに買い置きしておきます」


 矢車ちゃんが薄荷ちゃんを見た。


「私、多少勉強進んでるので、薄荷ちゃんがExcelの勉強してる間にいろいろ買ってきます」

「じゃ、お願いね」


 館の住人が増えたような増えてないような。まあ、人ならざる人との付き合いは、こういうものなのかもしれないな。

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