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お館様の代理人 呪いの館を相続したはずが館にめちゃくちゃ世話焼かれてるんですけど!  作者: zingibercolor
3章

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人も館も修繕は大事なんですけど

 朝の洗顔中。ここんとこ、近年稀に見るほど肌の調子がいい。もっちりつるすべ、手のひらに吸い付くよう。

 スキンケアはなんにも変えてない。毎日飲んでる霊薬、体が強くなった感じは全然全くないけど、いい感じにお腹が空いてご飯をおいしく食べられるし、排泄の調子もいいし。おまけに肌の調子もいいとなれば、明らかに健康にいい効果があるものと思われる。

 洗面所から出たらヤカが朝ご飯を運んできてくれていた。毎日いい感じに半熟の目玉焼き食べれるの本当にありがたいなあ、トーストも好きだし。


「ありがとー! 今日もおいしそう」

{それは良かった}


 今日の朝ごはんは、ベーコンエッグ、バタートースト、ブロッコリーとカブとパプリカの温サラダ。2人で食べながら、私はヤカに霊薬の効き目を話した。


「だから霊薬、体にはすごくいいみたいなんだよね」

{それはよかった。あなたが健康なのは嬉しい}

「まあ、私もちゃんと食べれて肌も調子いいのは嬉しいけど……でも霊薬っていうくらいなら、もうちょっと体力的なことどうにかしてくれないかなあって。相変わらず12時間寝ないと動けないし、動きすぎたら熱出るし」

{すべてがよくなるまでには時間がかかるのだろう。あなたは、どれくらい動けるようになったら嬉しい?}

「んー、理想としては、18時間仕事と勉強して、3時間余暇に当てて、3時間睡眠で回す、かなあ」

{それはもはや人間の活動ではない}

「えー、15歳からハタチまでずっとそれでやってたよ?」

{ずっとそれをやっていたから今体を壊しているのではないか?}

「それは……そうです」


 何にも反論できないので、私はカブを口に入れた。濃厚なごまドレッシングがかかってて、カブ本来の甘みもあっておいしい。そして、私はふと気づいた。


「そう言えば、ヤカはいつ寝てるの? 館中のお掃除に朝晩のご飯作りって、時間すごく必要じゃない?」


 ヤカは何でもないように言った。


{私はさほど睡眠を必要としない。1週間から10日おきに30分ほど眠れば大丈夫だ}

「え!? そんなちょっとでいいの!?」

{時間としては少しだが、眠るタイミングが問題だ。この間の強盗は、私が眠っていたタイミングだったので侵入を許してしまった}

「え、そうだったんだ……」

{警備システムをつけてくれたのはありがたかった。1週間に一度30分とは言え、その間に賊に入られたら、あなたを守れない}

「それは……ヤカのためにもなったならよかったけど」


 ていうか、今さらっと私を守るって言ったな?


「ヤカは、私が危ない目に遭ったら守ってくれるの?」

{もちろん。あなたの安全のために全力を尽くそう}

「なんでそこまでしてくれるの?」

{あなたがこの館に住んで、館を大事にしてくれるからだ}

「住んではいるけど、そんなに館のこと大事にしたかな?」

{あなたが初めて館に来たとき、鳥の糞を拭き取ってくれたのを覚えている}

「ああ、そう言えばそんなことあったっけ」

{割られた窓もすぐ直してくれたし、警備システムは館を守るためでもある。とても大事にしてくれていると思っている}

「そうなんだ」


 じゃ、普通のお手入れを普通にやってればそれでいいのかな。ていうか、それだと。


「ヤカは、館の普通のお手入れは嬉しいみたいだけど、私別にやりたいとかじゃないし予定もないけど、例えば館の大規模な修繕とか……もっと言っちゃうと、改築とか増築とかはヤカの中ではどういう扱いなの? イヤ? 嬉しい?」


 館が壊れたとしても館に手を入れてほしくない、だとかなりデリケートな問題になっちゃうけど……?

 でも、そんなに心配しなくていいみたいだった。ヤカの答えはこうだった。


{ものによるが、そうだな、この土地に私がいる場所が確保できるということなら改築も増築も歓迎だ。ただ、あまり一度に大規模にやられると、工事中に私がいる場所がなくなるから、それは困る}

「そうなんだ、じゃ、地震とかで壊れちゃったときは普通に直せばいいのね」

{一応、この館は阪神淡路大震災の後に耐震工事をしてある。仮にそれで足りなくても、この館には隅々まで私が染み込んでいるから、倒壊ということはないだろう}

「へえー、頼りになるう……」


 館を壊されるのはヤカの地雷なわけだけど、修繕も増築も改築もオッケーってことなら、融通はかなり利く方だ。別に改築も増築もしたいわけじゃないけど、建物って永遠じゃないし、万が一の時のことは聞いておいたほうがいいもんね。

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