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お館様の代理人 呪いの館を相続したはずが館にめちゃくちゃ世話焼かれてるんですけど!  作者: zingibercolor
3章

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わからなくても一緒に暮らしたいんですけど

 矢車ちゃんと薄荷ちゃんを交えたお昼は、業務報告と勉強の進捗度合いを聞く場になってきている。ヤカも努力して一緒にご飯を食べに来てくれ、矢車ちゃんと薄荷ちゃんに話しかけられても隠れようとはしなくなった。

 そんな訳で、今日もお昼ご飯を庭の東屋で食べている。矢車ちゃんはExcelでSUM関数とMIN関数とMAX関数を使えるようになって、今IF関数を勉強しているところとのこと。薄荷ちゃんはまずExcelへの入力からつまづいていたので、今は四則演算をやっとマスターしたところとのことだ。

 薄荷ちゃんは悲しげだった。


「私、パソコン向いてないんですかねえ……」


 私は薄荷ちゃんを慰めた。


「普段使ってない人ならそんなもんよ、矢車ちゃんが慣れてるだけ。情報科目と一緒に、ゆっくり身につけていけばいいし。ていうか、矢車ちゃんは何でそんなに慣れてるの?」


 矢車ちゃんは照れくさそうにした。


「ネットで色々調べてるうちになんとなく……動画編集で入力はすごくしますし、どうやるか調べてく中で、パソコンでやれることって割とたくさんあるなってわかってきますし」

「そう言えばYouTubeに動画上げてるんだっけ」

「はい」

「どんなのか見せてよ」


 矢車ちゃんは椅子から飛び上がりそうになった。


「そ、そそそそそれは、えっと、中の人……あわわわわ、えっとその」

「あ、いや、嫌ならいいけども。うちで働いてるって特定されること言わないでくれれば」

「それはもう、気をつけます」


 矢車ちゃんは真剣な顔で頷いた。

 今日のお昼のメニューは、肉豆腐、いんげんのごま和え、紅白なます。それと九さんち産のナスの浅漬。食べ物のグレードを上げてみようというヤカの提案を取り入れて、肉豆腐は駅前のスーパーで一番いい牛肉を使ったとのことである。確かに、柔らかくて脂が甘くておいしい。

 矢車ちゃんが、いんげんを口に入れてもぐもぐしてから言った。


「そうだ、ヤカ様にお聞きしたかったことがあるんですけど」


 ヤカは私以外から直接話を振られてビクッとしたが、別に矢車ちゃんが嫌いというわけではないので{な、なんだろうか}と答えた。矢車ちゃんは聞いてきた。


「ヤカ様って、屋敷妖精さんなんですか?」

{……うーん……最初の持ち主にはそう扱われていたが、屋敷妖精ではないと思う}

「そうなんですか?」


 私は矢車ちゃんに聞いた。


「屋敷妖精って何?」

「お屋敷の家事なんかのお手伝いをしてくれる妖精です、ブラウニーとか言うそうですけど」

「へえー」


 薄荷ちゃんが補足してくれた。


「人間が見てるところだとお手伝いしてくれなくて、夜なんかにこっそり家事をしてくれるんです」

「ヤカじゃん」


 ヤカは困ったように私に言った。


{しかし、私は屋敷妖精のような姿をしていない。屋敷妖精はイギリスあたりの伝承らしいが、私は気がついたときはこの日本にいたので、やはり屋敷妖精ではないと思う}

「そうなんだ」


 なるほどねえ。

 矢車ちゃんは訝しげな顔をした。


「ヤカ様が人ではないのはわかるんですけど、でも霊力と言うか妖力というか、霊や妖怪や妖精につきものなそういう気配は全然しないんですよね、だから不思議だなって思って」


 私はびっくりした。


「え、ヤカ、隠れてなくてもそういう気配しないんだ?」


 九さんもそういう気配感じないって言ってた。ヤカが隠れてるせいじゃないかって言ってたけど、ヤカが目の前にいるときでもそういう気配しないんだ?


「じゃあ、ヤカって一体どういう存在なんだろうね?」


 ヤカはさみしげに言った。


{どんな存在でも、ここにいたいしあなたに住み続けてほしい}

「それは前提だけどさあ」

{それは嬉しい。私としては、今後に期待している}

「今後?」

{今後、人ならざるものがこの館に集まることになっている。その中には、私に似た存在もいるかもしれない}

「なーるほど」

{確証はないが}

「でも期待するには十分でしょ、何かわかるといいね」


 人ならざるものが集まるにあたって、ヤカが寂しくない以上のメリットがあるのか。それはいいことだし、ヤカが自分の正体を見つけられたらいいなと思う。

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