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お館様の代理人 呪いの館を相続したはずが館にめちゃくちゃ世話焼かれてるんですけど!  作者: zingibercolor
3章

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SNSもたまには役に立つんですけど

 朝ごはん後。身繕いを済ませて、さて庭を見ようとヤカを誘うと、ヤカは{少し待ってほしい}と一旦床に染み込み、また床から染み出してきて、私より少し背の高い人型になった。

 あれ!? 解像度が増してる!? 今まで白いシーツ被った人型だったのに、さらに人っぽいシルエットになって、白いフード付きロングコート被ってる人みたいになってる! フード目深に被りすぎて、顔はやっぱり見えないけども!


「なんか進化してる! どうしたの!?」

{もう少し人らしくしてみた。まだ完全とは行かないが。万が一あなたと歩いているところを見られた時、何だかよく分からないものと一緒に歩いていると思われるのは避けたい}

「別にいいのに。ヤカ、元々の自分の見た目あんまり好きじゃないの?」

{この世界の誰とも似ていないところは、あまり好きではない}

「そうなんだ……」


 確かに、最強ハウスキーパー透明スライムなんてそうそういないけど……まあ、本人が好きでやってるなら口を挟むことじゃないか。

 2人で玄関を出て、庭を歩く。雨の合間、曇ってはいるけど、雨で空気のホコリが落ちて空間が澄んだ感じ。足元の芝生も、よく手入れされている。ヤカに案内されて行くと、雨に濡れた秋の花が次々と目にとまった。青紫のリンドウ、赤やオレンジやピンクのコスモス、紅白の彼岸花……え! ピンクの彼岸花もある!


「これきれい! 初めて見た!」

{珍しいと思う、球根が出回り始めた頃に掛川氏に取り寄せてもらった}

「へえー……」


 紫の花がたくさんついた房みたいな花もある、葉が銀色がかった緑できれい。


「これはなんて花?」

{アメジストセージだ、葉の香りもよい}

「え、ちょっと嗅いでみよ」


 シルバーグリーンの葉を嗅いでみると、確かにハーブ系のスーッとした香り。へえー、こんなのもあるんだ!

 こないだ見た、青紫のキキョウも咲いていた。


「前に食堂にお花飾っといてくれたの、ヤカだよね?」

{そうだ。いつまでも花をつけさせていると実に栄養が取られてしまうので、ある程度咲いたら切ることが多いのだが、まだきれいなものは飾ってもいいかと思ってそうした}

「そうなんだ、花のお手入れって大変なんだね」

{しかし、やりがいがある}


 ヤカは胸を張った。


「花の手入れ、好きなんだ?」

{庭全体の手入れが好きだ。手をかければかけるほど応えてくれる。願わくば、私の手掛けた庭を見る人が増えてほしい}

「そっかあ……」


 白とピンクの、コスモスに似てるけどコスモスより丸っこい花びらの花が揺れる。赤いダリアもまだまだ咲いてる。でも、この館はそんなに頻繁にお客を呼ぶような家じゃないし、どうすれば庭をもっといろんな人に見てもらえるかな?

 私は、ふと思いついてポケットのスマホを取り出した。いつも着てるロングワンピース、ポケットが付いてるのがありがたくて、同じメーカーの色違いを何枚も買って着てるんだよね。


「リアルの人じゃなくてもいい? 見てもらうの」

{リアルでない人とは?}

「まあ、ネット越しの人たち。きれいな花ばっかりだから、写真撮ってSNSに上げたら、そこそこいろんな人が見てくれると思うんだよね」


 私は、ちょっと戻ってさっきのピンク彼岸花を写真に撮った。適当にトリミングとフィルターをかけて、よりきれいな画像にする。私のSNSで、フォロワー数が多いのはアライさん界隈のXアカウント、次にリアルの友達と繋がっていたXアカウント、それからインスタグラム、最後にmisskey.io。どうしようかな、アライさん界隈は平和な話題を求めてるし、ここがいいかな。いや……ヤカのためだ、これは全部のアカウントでアップしよう!


「ね、見て。ピンクのやつ、SNSにアップするから」


 私はヤカにスマホを見せた。


{えすえぬえす?}

「ソーシャルネットワーキングサービスの略。インターネットでたくさんの人と繋がれるサービス。私のアカウントをフォロー……お気に入りにして定期的に見てくれてる人が、合計で100人くらいいるのね。で、そこにこの写真をアップロードする」


 私は、まずXの2つのアカウントに画像をアップした。画像をアップした投稿の画面を開く。


「この画面のね、ここの数字が見てくれた人の数。この画像がいいなって思ってくれた人はこのハートマークを押してくれて、押してくれた人の数はここに出る。この画像を他の人にも見てほしいなって思った人はこのぐるぐるマークを押してくれて、そしたらもっと見てくれる人が増える。見てくれる人、いきなりは増えないけど、私1人よりはたくさんの人が見てくれると思うから」

{そんなものもあるのか、インターネットは!?}

「掛川さんはやってなかった?」

{似たような画面は見たことがあるが……見ているだけだった。自分でも同じものを載せられるとは思っても見なかった}

「へえー、なるほど」


 情報収集には使ってたけど、発信はしてなかったわけか。

 ヤカはそわそわしだした。


{あの、それなら、他の人に見せてほしいところがある}

「どこ?」

{東屋にバラが咲き始めている、少し引いて撮るととても美しいと思う}


 ヤカについて東屋まで行くと、東屋の壁や屋根に絡まったつるバラが一斉に咲き始めていた。赤、白、ピンク、黄色、薄紫のバラまである!


「うわー! こんなにきれいになるんだ!」

{どうだろうか、たくさんの人に見てもらえるだろうか}

「ちょっと待ってね……うわー、これ私の写真の腕も問われるなあ!」


 少し引いて、いろんな角度から写真を撮った。よく撮れたものを選び、各SNSにアップする。


「これでよし。土曜だし、この時間に見てる人そこそこいると思うから、あとは待ってたら閲覧数増えると思うよ」

{どれくらいの人が見てくれるだろう?}


 ヤカの声が明らかにワクワクしているので、私は笑ってしまった。


「まあ、リアルの人にも見てもらいたいよね。そこの東屋、椅子4脚あるじゃない?」


 東屋の屋根の下には、青銅製に見えるテーブルと椅子がある。


「月曜になったらさ、晴れるからちょっと暑いかもだけどさ、矢車ちゃんと薄荷ちゃんにお願いして、お昼ここに運んでもらって、皆で庭眺めながらお昼食べるのどう? そしたら、2人にも庭見てもらえるでしょ?」

{……素晴らしい}


 ヤカは感極まったように言った。

 ヤカが喜ぶなら、それくらいやりますよ。私にたくさんフォロワーがいれば、もっと良かったんだけどね。

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