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お館様の代理人 呪いの館を相続したはずが館にめちゃくちゃ世話焼かれてるんですけど!  作者: zingibercolor
3章

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ちょっと歩くならしてみたいんですけど

 それから数日は何事もなく過ぎた。矢車ちゃんと薄荷ちゃんはちゃんと仕事をこなしてくれて、館は空気がこもらなかったし、水まわりはピカピカだし、買い物も支障なかったし、お昼にはおいしい和食が並んだ。サンマの塩焼き、ブリの照り焼き、アジの南蛮漬け、筑前煮、卯の花、小松菜のわさび和え、ほうれん草のごま和え、なめこ汁……。

 ヤカも喜んでいた。


{和食はあまり得意ではないので、彼女らが和食を作ってくれて嬉しい}

「そう言えば、ヤカが作るの洋食だね」

{料理を覚えたのは最初の持ち主がいた頃で、彼は西洋の人だったし、掛川氏も洋食好みだったんだ}

「なーるほど」


 2人用のパソコンが届いたので、2人の勉強も進めている。やっぱり矢車ちゃんの習得のほうが早く、薄荷ちゃんは矢車ちゃんに助けられながら勉強しているようだ。

 気になることと言えば。矢車ちゃんが、初めての買い物から帰ってきたときすごく興奮していたのだ。お昼のとき、矢車ちゃんは嬉しそうに報告してくれた。


「すっごく栄えててえ! 人がいっぱいいて、駅ビルおっきくて、スーパー入ってるショッピングモールもおっきくて! 何でも手に入りそうです!」

「そうなんだ」


 私もそのうち行きたいなあ、そのうち2人に付き添ってもらおうか。

 薄荷ちゃんが矢車ちゃんに聞いた。


「バズりそうなものあった?」

「探せばありそう!」


 バズ? 私は2人に聞いた。


「何、バズりたいの?」

「矢車ちゃんはバズりたいんです、YouTubeの……」


 矢車ちゃんはあわてて薄荷ちゃんの口を塞いだ。


「秘密なの! 秘密!!」


 何してるんだろ。あ、だから矢車ちゃん薄荷ちゃんよりITスキル高くて動画編集できるのか、目的があると習得が早いもんね。

 私は矢車ちゃんに聞いた。


「YouTubeでバズりたいの?」


 遠く険しい道のりだと思うんだけど。矢車ちゃんはもじもじした。


「その……YouTubeで雑談……その、おしゃべりする動画上げてて……流行りのものには触れておきたくて……」

「ふーん」


 別に好きにすればいいと思うけども。一応釘を刺しておいた。


「この館が特定できるようなことは言わないでね、ここ強盗入ったことあるからさ、お金があると思われると狙われそうだから」

「言いません! 身バレしそうなことは絶対言いません! 気をつけます!!」

「うん、ならよし。バズるといいね」


 九さんが来ることもあった。


「2人から話は聞いておる。よくしてもらっておるからのう、礼をしたくての」

「そんな、いいですよ」

「しかしお主、体が弱くて困っているのじゃろう?」

「それは、はい……遠出もままならなくて、12時間寝ないと動けなくて、午前動いたら午後熱が出て……」

「苦労しておるのう……」


 九さんは嘆息した。


「慣れましたけどね」


 そう言うと、九さんは手提げから茶筒を出した。


「うちで作った柿の葉茶じゃ。妾の土地で採れたものは、多少ながら体を癒やす効果がある、飲むとよい」

「え、いいんですか!?」

「お主のように、長年の患いだとよくなるまで時間がかかるじゃろうが。矢車と薄荷に

 野菜だの柿だのも持たせよう、ちょくちょく食べるとよい」

「ありがとうございます!」


 いいものもらったし、2人ともちゃんとやってくれるし、ヤカも楽しそうだし。

 そんなこんなで土曜が来て、矢車ちゃんと薄荷ちゃんは休み。朝、ヤカとゆっくり朝食をとっていると、ヤカが言った。


{提案があるのだが}

「何?」

{薬師如来様は、気散じに歩くとよいと言っていたそうだが}

「うん」

{調子がいいとき、庭を少し歩かないか? 気候もよくなってきたし}

「庭?」


 よく手入れされた庭を思い出す。今ごろ秋の花が咲き始めかな。最近雨続きだったけど、やっとおさまったし、外歩くの、いいかも。


「じゃ、今日ちょっと歩こうかな。ヤカも行く?」


 ヤカは少し考え、{いつもと少し違う姿で行く}と言った。どんな姿だろう?

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