とは言えできれば顔出して欲しいんですけど
Uberで買ったサラダラップと牛乳を昼食兼夕飯にして、もそもそ食べながらぼんやりしている。
一人暮らしの病人ほど心細いものはない。足を踏み外したら受け止めてくれる、置き配を放置したら冷蔵庫に入れてくれる、そんな存在は、それだけでありがたい。おそらくは、実の祖父でもあるし。
しかし絨毯も食材も動かせるなら……ペンくらい動かせるんじゃないか?
私は荷物の整理に取り掛かり、何とかしてメモ帳とボールペンを取り出した。そして、虚空に向けて話しかけた。
「あの……いらっしゃいますよね、お館様? 助けてくださって大変ありがたく思っています、ここに紙とペン置いときますので、何か言いたいことがあったら書いといてくださるとありがたいのですが」
で、机に置いてみるが、特に反応なし。うーん、これまで私が見てないところで動いてたから、見てたら動かないのかな?
私は再び虚空に言った。
「あの、なんか私が見てるところで動きたくないとかでしたら、私が寝てる時にでも書いといてください……」
それからはまた部屋の整理をし、書き物用の机にタブレットとパソコンを備え付けてコンセント周りを整理し、タブレットとスマホの充電器と備え付け、それでもう疲れて、なんとかシャワー浴びて髪も乾かさず寝た。
で、起きるとメモになんかたくさん書いてあった。紙パックの甘いカフェオレ飲んでなんとか目を覚ましつつ、内容に目を通す。
{バラの肥料:牛糞堆肥15L、ハイポネックス バラのまくだけ肥料1.2kg。バラの薬:ベニカXガード粒剤550g、マイローズ殺菌スプレー3本。花の肥料:虫を予防するマグァンプ1kg、ハイポネックス微粉500g、まくだけで蘇る土のリサイクル材14L3袋。掃除用品:塩素系漂白剤3本、酸素系漂白剤3本、クエン酸100g、メラミンスポンジ3袋。以上玄関へ求む}
そう言えば、庭はずいぶん良く手入れされてたし、花もいろいろ咲いてたな。
「えっと……これは買えということかな?」
少し考えて、私は虚空に言った。
「Amazon……ネット通販でどれも買えると思うんですけど、ただ、玄関に置きっぱにされると面倒なんで、玄関に宅配ボックス置きたいんですけど……ダメですかね?」
特に反応はない。
「あ、見てたらダメなんでした。しばらく部屋出てるので、いいか悪いかだけ書いといてください」
私は部屋を出て、しばらくスマホをいじってAmazonを漁った。10分くらいして戻ると、メモに「可」と書き加えられていた。
「じゃ、注文しますんで……すぐ来るとは限りませんが……」
ここは横浜、Amazonの配達が割合早く来る地域とはいえ、品物によっては時間かかることもあるし。
とりあえず、意思疎通は可能。これなら、何とかやっていけるかな。




