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お館様の代理人 呪いの館を相続したはずが館にめちゃくちゃ世話焼かれてるんですけど!  作者: zingibercolor
第2章

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そんならいくらだって買うんですけど

 いろいろ話して割と疲れたけど、私ヤカの話も聞きたい。でも喋ってのど渇いたな。


「あのさ、私ヤカの話も聞きたいな、お茶淹れたら飲む?」


 ヤカの触手は頷き、それからペンで文章を書き付けた。


{このところ熱量不足で、何か熱量の高いものがあると嬉しい}


 熱量? ああ、カロリーのことか。カロリーいるんだな……え、普通に飲食する存在なの!?


「えっ今までどうしてたの!? 何も食べてなかったよね!? 大丈夫!? お腹空いてない!?」

{食べてはいる}

「え、そうなの? 何食べてるの?」

{ちりやホコリや庭の雑草や剪定した枝、生えてきたキノコや虫やネズミの死骸など}

「それ食べ物じゃないよ!!」


 ここ最近で一番の大声が出た。私は慌てた。


「えっどうしよう、買い置きそんなにない……いや、とりあえずあるもの食べて! 食べ物なんていくらでも買うから!」


 私はあわてて食料を出してきた。カロリーメイトの残り、納豆、パックご飯、それから冷凍パスタ、練乳チューブ、野菜ジュース。


「全部食べていいから! 今ご飯とパスタあっためるね!」

{そのまま食べられる、心配いらない、ありがとう}


 ヤカの触手は2つに分かれ、器用にカロリーメイトの袋を空けた。触手の根本から透明なスライムがあふれ出し、カロリーメイトをなめていく。カロリーメイトはさらさらとスライムの中に溶けていき、瞬くまに透明になって消化されてしまった。納豆もパックご飯も同様にさらさらと溶けていき、冷凍パスタは凍ったまま、練乳も野菜ジュースもあっという間に消化されてしまった。触手はまた文章を書き付けた。


{容器も食べてしまって構わないか?}

「食べれるの!? いや、まあ、ヤカが構わないなら好きにしてくれていいけど……」


 するとスライムはあっという間にビニールやプラスチックを包み込み、やはり消化してしまった。すごいな……。


「足りた? もっといる?」

{当座はこれで済むが、定期的に熱量の高いものをもらえると嬉しい}

「それもう、普通に毎日ご飯食べたほうがよくない?」

{そうかもしれない}

「じゃあ、これから2人分ご飯いるなあ。買い足すか……」


 とりあえず紅茶を淹れ、マグカップを2つ出してヤカにも勧める。それから私はスマホを取り出した。


「何でも買うよ、何食べたい?」


 ヤカの触手はスマホを覗き込んだ。そしてメモに書き付ける。


 {それもインターネットにつながるものなのか?}

「え、うん」

{パソコンでしかできないと思っていた}

「そうなの?」


 掛川さん、スマホもタブレットも持ってなかったのかな?


「まあ、スマホもタブレットもネットに繋ぎ放題よ。とりあえず、お昼を選ぼうか」


 私はUberを開き、ヤカの触手に見せた。


「何か食べたいものある?」


 ヤカの触手は戸惑ったように揺れ、メモにまた書きつけた。


{たくさんありすぎてよくわからない。熱量が高そうなものなら何でもいい}

「そう? じゃあ、揚げ物でも買おうか。私も久々に揚げ物食べちゃおうかな」


 適当に探すと、ケンタッキーがちょうどよさそうだった。ヤカ用にフライドチキン6ピースのボックスとフライドポテト盛り盛りのボックスをカートに入れ、ビスケットとチョコパイも足す。ダブルチキンフィレバーガーと、飲み物にレモネードも足しとこうか。私はセットの、照り焼きツイスターとフライドポテトSと烏龍茶でいいや。

 一応、ヤカに注文内容を説明しておく。


「フライドチキンとフライドポテトたくさん、甘くて熱量ありそうなお菓子2つ、あとおっきいチキンバーガーとレモネード。これでいい?」

{素晴らしい}

「じゃあこれで注文しとくね」


 置き配で注文。それから、私は思いついてタブレットを持ってきた。とりあえずAmazonを開いて、ヤカの触手に見せる。


「操作方法わかる? お金だけはあるから、好きなものなんでも自由に買っていいから」


 ヤカの触手は、びっくりしたように伸びた。


「どうしたの?」


 ヤカの触手はまた書きつけた。


{自由にというのは初めてだ}

「そうなの?」

{おこぼれか、許可制しかなかった}

「許可制? 許可するような人がいたの?」

 {掛川氏に買ってほしいもののメモを書いていた、却下されることもあった}

「そうなんだ……」


 買い物も自由にできないの、きついな……。

 私はヤカの触手が見やすい位置にタブレットを置いた。


「本当になんでも買ってよ、楽天もヨドバシもいくらでも使っていいからね」


 ヤカの触手はタブレットに触れ、最初はたどたどしかったが、タップのコツを飲み込んだらしくて、すぐにいろいろなページを見始めた。


{パソコンとさほど変わらないな}

「パソコン使ったことあるの?」

{掛川氏が寝ている間によく調べ物をしていた}

「そうなんだ……Amazonのアカウント、私と共有で悪いけど、自分のアカウント欲しかったら適当に作ってね、クレジットカードとか改めて作るし」

{そんなにいいのか?}

「見られたくない買い物とかあるでしょ?」

{あるかもしれない}


 そんなこんなで、私はUber経由でスーパーの食べ物を買い込み、ヤカのリクエストの品も買った。ヤカはタブレットをいじってAmazonや楽天を見て回っていて、しばらく2人で作業していたら、Uberで買ったお昼が届いた。ヤカが玄関からケンタッキーの包みを持ってきてくれて、2人でのお昼にした。いただきますをして、ヤカの触手はフライドチキンをひとつ取って、それから照り焼きツイスターの包みを開けてる私を見て何か書きつけた。


{あなたにはもっと食べてほしい}

「えー? これで十分よ?」

{明らかに十分食べていない、体格的に}

「そうかなあ」


 ヤカは持ってるフライドチキンを私に差し出した。


「え? くれるの?」

{食べてほしい}

「じゃ、ありがたくいただきます……」


 私はフライドチキンを受け取り、かじった。久々の油の味。全然サクサクしてない衣なんだけど、油と塩気がたっぷりで、快楽が脳にダイレクトでくる。肉は柔らかくてしっとり。たまに食べるとおいしいな、いや、誰かと食べてるからおいしいのかもね。

 照り焼きツイスターもかじる。これは衣サクサクでピリ辛。レタスたっぷりなのもさわやかでいい。

 ヤカはフライドチキンを骨ごと消化してしまって、フライドポテトにも手を付け始めた。私は烏龍茶を飲んで、大きく息をついた。


「いろいろやって疲れちゃった、午後寝ちゃうかも……」

{疲れさせてすまない}

「いいの、これは嬉しい疲れなの」


 私はヤカに笑いかけた。

 久々に人とたくさん話した、疲れたけど、とってもメンタルにいい。午後も、明日も、明後日も、こんな風にたくさん話して過ごせたらいいな。

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