別視点 {お館様}の狼狽
ま、真希氏を泣かせてしまった! どうすればいいんだ!? どうすればいいんだ!?
姿を見せてしまってから。{私}はどうしていいか分からなくて、ずっと身を潜めていた。真希氏は無事に警察に保護され、ことが済んでから館を直してくれた。警備システムもしっかりつけてくれた。そのことはうれしかったけれど、それから真希氏は私のことを探し始めた。けれど、専門家に{お館様}はどこにもいないと言われて、悪くすると死んでいるかもしれないと言われて、彼女は愕然とし、一人になってからポロポロ泣き始めてしまったのだ。
生きている! 私は普通に生きている! そんなに悲しませるなら、彼女が私の真の姿を見ても嫌わないなら、ちゃんと説明すればよかった!
しかし。
私は、ちゃんと発声したことがほとんどない。うまく話せる自信がない。人の姿を模したことがないから、何とか形をつくったとしても、感情に表情をつなげられない。無表情のよくわからない物体がいきなり現れても、やはりおびえさせるだけではないか?
真希は、泣きながら眠ってしまった。私は彼女が寝入ったのを確認して、彼女が用意してくれたペンを触手で取った。そして、用意されたメモに、こう書き込んでおいた。
{私は無事だ。私はあなたの祖父ではない、この館ができたころからこの館に寄生している存在だ。自分のことはよく分からない。ちゃんと声を出したことがないので、話すのは少し待ってほしい。あなたに驚かれないような姿を作るのにも、もう少し時間がほしい。しばらくは、このメモでやり取りさせてもらえないだろうか?}
これで大丈夫だろうか? これで、真希氏はもう泣かないだろうか?




