絶対ここにいてほしいんですけど
茜おばさんは、翌日例の友達を連れてやってきた。この連れてきた友達が、黒髪ロングのはっとするほどきれいな娘で、その辺の芋レベルの私は圧倒されてしまった。妖怪とかお化け関連の人って、みんなこんなにきれいなの!?
圧倒的美人のその子は、全然気取ることなく少年のような快活な笑みで言った。
『こんにちは! 金谷千歳って言います! 怨霊です!』
「こ、こんにちは……えっと、どのへんが怨霊なんですか?」
『んー、いきなり姿変わっても驚きませんか?』
金谷さんは首を傾げて聞いてくる。私が「大丈夫です」と頷くと、金谷さんはボンと音を立てて、一反木綿を黒くして毛羽立たせたような感じのお化けになった。
「わっ! 本当にオバケ!」
私がびっくりすると、茜おばさんは笑った。
「いいお化けだからね、私、千歳ちゃんに命助けてもらったことあるんだから」
「そんなに濃いエピソードあるの!?」
『ワシ、だいぶ前に、星野さんにぶつかりそうなトラック跳ね飛ばしたことがあるんです』
「怨霊ってそんなにパワフルなんです!?」
びっくりしっぱなしだったが、本題はそこじゃない。私は2人に上がってもらって、応接間に来てもらってコーヒーとお菓子を出し、改めて金谷さん(女の子に戻った)に経緯を説明した。
金谷さんは首を傾げた。
『んー、ワシはどっちかと言うと霊とかを殴る担当なんですけど、でもそんなに物理的に動ける霊だったらワシでも探知できると思うんですけど……』
「いや、殴らないでください!」
命の恩人なのに!
『そんなことしないです、襲ってくるならともかく。で、ワシ、ここで霊とか妖怪とか精霊とかの気配全然感じないんですよね』
「え? そうなんですか?」
霊じゃないのはまだわかるけど、妖怪も精霊も?
『一度、館ぐるっと見て回ってもいいですか?』
「あ、どうぞ」
話をしただけで疲れたので、私は金谷さんに好きに館を見てもらった。金谷さんは茜おばさんといっしょに、本館の部屋をすべて見て、西館も全部見て、東館の部屋、私の部屋も含めて全部見たあと、また応接間に戻ってきた。茜おばさんは「本当にきれいなお館ねえ」と感心していたけど、金谷さんは困った顔をしている。
『霊も妖怪も精も何もいないです、悪いのもいいのも』
「いない?」
お館様……いないの? いなくなっちゃったの?
いや、待って。九さんも、そういう気配感じないって言ってた。隠れてて恥ずかしがりなんじゃないかって。
金谷さんが聞いてきた。
『もっと探知がうまい人、ワシの働いてる建築事務所にいるから紹介しましょうか? そうすると、お金かかりますけど』
お金なんて糸目つけないけど、どうしようか、一度九さんに相談してみたい。
私は金谷さんに言った。
「えっと……他にも相談してみたい人がいるので、その人に相談してダメだったらお願いしてもいいですか?」
『わかりました』
金谷さんは頷いた。金谷さんは、個人の連絡先と、金谷さんが働いてる建築事務所の連絡先をくれた。
お館様、恥ずかしがりで隠れてるだけだよね? いなくなったりなんて、してないよね?




