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『世界のシナリオにハメられた「黒煙の魔女」の娘、一子相伝の【魔法障壁全貫通】で理不尽な運命もバカ王子もすべてブチ抜く  作者: ルツ


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黒煙の魔女の、静かな恋と遺言(母親視点)

 私は、口数が少ない。

昔から、自分の考えていることを言葉にするのが、どうにも苦手だった。 

だから王都の奴らには「冷酷非道な外道魔女」と恐れられ、最後は泥泥とした政治劇の道具にされて、この最果ての村へ流刑にされた。 

……別に、どうでもよかった。あんな生温い国、未練なんてない。 ただ、一つだけ。 

私の宝箱の奥には、先端の欠けた白銀の大剣の破片が眠っている。 

王国の最強聖騎士。

あの最高に不器用で、最高に気高かった男が、私を守るためにその身を挺して残した、最初で最後の愛の証。 私があの国で唯一愛し、そして私を救うためにすべてを奪われた男の形見だった。 

だから、あの男にそっくりな紫の瞳を持って生まれてきた娘──レオナが可愛くて仕方がなかった。 

高熱を出したあの日から、レオナは時折「前世のゲーム知識」だの「バカ王子に復讐する」だの、突拍子もないことを呟くようになった。どうやら、私を陥れた偽りの英雄たちの子供に、一矢報いたいらしい。 

王都は危険だ。血筋と格差がすべてを縛る、理不尽なシステム。 

あの場所に娘を送り出すなら、世界中の誰も触れられないほどの『牙』を持たせなければならない。 

だから私は、レオナを魔境の森へ放り出し、サバイバル生活を命じた。 私がレオナに教えたのは、対象の防御をぶち抜く『黒魔術の貫通魔法』だけ。 

他の属性魔法(火や水や土)を教えなかったのには、理由がある。 

魔法なんてものはね、綺麗なお勉強じゃない。

世界のシステムや物理法則という『障壁』を、自分の魔力で強引に突き破って、現象を世界に【貫通】させるエゴそのものだ。 

つまり、あらゆる魔法の本質であり、すべての基礎は『貫通魔法』に集約される。

 私はレオナに、基礎これだけを教えた。 

過酷なサバイバルを経験すれば、レオナも自分で気づくはずだ。火が欲しければ火魔法を編み出し、宿が欲しければ土魔法で家を作るだろう。

そうやって、自分で多様な魔法を身につけて成長してくるのを、私は静かに期待していた。 

──数ヶ月後。様子を見に行った私は、自分の目を疑った。(……えぇ。何、あれ) 

森の開けた場所に立っていたのは、即席とは思えないほど頑丈な、石造りの立派なシェルターだった。 私はレオナが土魔法を覚えたのだと思った。

しかし、違った。 

レオナは、岩石の分子結合の隙間に極小の貫通魔法を滑り込ませて綺麗に切断し、それを魔力で接着して家をクラフトしていた。 

さらに、料理の時間。 

レオナは火魔法を使ったのではない。細い針のように研ぎ澄ませた貫通魔法を空気中に連射し、その猛烈な「分子摩擦」によって、力技で火を起こしていた。(……斜め上すぎる。なんで全部、貫通魔法で代用してるの) おまけに、森の暴れん坊であるシャドウ・ウルフの結界の隙間を貫通魔法でハッキングし、ピリッと電気を流して気絶させ、

いつの間にか『ポチ』と名付けてテイムまでしていた。 私は物陰で、静かに頭を抱えた。

 普通、そんな面倒で器用な真似はできない。

基礎である貫通魔法をそこまで異常に進化させるなんて、完全に脳筋の、本物の外道の発想だ。私の想像を遥かに超えた、とんでもないドラ娘に育ってしまった。 だけど──。 

家の裏手の岩場で、再び私と対峙したレオナの瞳は、あの男と同じように気高く、美しく澄んでいた。

「行きます、お母さん!」 

放たれた、細く、どこまでも研ぎ澄まされた漆黒の一筋。 

私の展開した、防御・反射・吸収の多層障壁。

その秒単位で変化する術式の隙間を、レオナの魔法は完璧にハッキングし、解読し、文字通り【全貫通】した。 シュッ、と風が鳴り、私の頬に温かい血が伝わる。(……あぁ。本当に、強くなったね) 

パチクリと瞬きをして、私は自分の頬の血に触れた。 私の期待した形とは全然違ったけれど。呆れるほど真っ直ぐで、呆れるほど凶悪な、世界で唯一の『牙』。 

これなら、あの腐った王都のバカ王子どもがどんな盾を構えようが、一瞬でブチ抜いていける。

「……合格。よく頑張ったね、レオナ。……ご飯、できてるよ」 

私はレオナの元へ歩み寄り、泥だらけの頭をそっと撫でた。 

私の可愛いレオナ。お前はもう、誰にも負けない。 

けれど、世界シナリオのシステムは、私たちの平穏を許してはくれなかった。 

翌日。最果ての村の空が、あり得ないほどの「絶望の闇」に包まれる。雲を割り、地を震わせて現れたのは、天災級魔獣『黒龍』。 

私は一目で理解した。 

これはただの災害じゃない。王都の黒幕どもが、私を確実に処分し、その罪を歴史から完全に消し去るために仕組んだ、理不尽な「世界の調律(暗殺の強制力)」。 そして、あの人が今も助けに来られない理由も、きっとこれだ。あの人が私を裏切るはずがない。「お嬢様、私の後ろへ!!」 

刃を抜くジークを片手で制し、私は静かに前に歩み出る。 身体の奥底から、黒い煙の魔力を爆発させる。「……私の娘に、手を出そうなんて一億年早いよ」 

感情の読めない私の瞳に、本当の『最強外道』の怒りが灯る。 

私の命のすべてを、魔力へと変換する。レオナに遺す、一世一代の、世界をブチ抜く最後の術式にんげんのあいを──今、ここで完成させる。

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