[94]
夕暮れの川辺――
オレンジ色の空が、
ゆっくりと群青へ変わり始めていた。
バーベキューの片付けも終わり、
皆がまったりしていたその時。
真子がニヤリと笑う。
「よしっ」
パンッ!!
手を叩く。
「これから肝試しやりまーす!!」
「「「「「おおーー!!」」」」」
・・・とはならなかった。
「えぇぇぇぇ・・・・」
「もう帰りたい・・・・」
「今から?」
テンションに差がありすぎる。
真子は頬を膨らませる。
「えー、いいじゃん」
「夏と言えば肝試しでしょー」
玲子が嫌そうな顔。
「まこちの“いいじゃん”は信用ならんのよ」
澪も腕を組んで頷く。
「絶対ロクなことしない」
真子、
ニヤァ。
「今回は“本物”呼ばないから大丈夫だよ」
シーーーーン・・・・
ケンケンと由美の顔が、
ピクリと引きつる。
莉英奈だけが、
静かに真子を見る。
「・・・・“今回は”?」
真子、
聞こえないフリ。
「よーーーし!!」
「んで、今回は11人全員、脅かし役でーす!!」
「「「「「は?」」」」」
真子はスマホを掲げる。
「今からクラスのみんなにLIMO送るから」
「来た人たちを全力でビビらせる!!」
玲子は先程と打って変わって目を輝かせる。
「ちょ、ちょっと待って」
「それ、めっちゃ楽しそうじゃない?」
「でしょー!?」
意気投合。
澪はまだ不安そう。
「いやでも・・・・」
「何するの?」
真子、
ニヤリ。
「みんな幽霊になるのだよ」
⸻
数分後――
即席・作戦会議。
真子はお決まりの監督キャップにサングラスをかけている。
右手には棒、左手にはメガホンを握っていた。
そして、地面へ棒でグループを書いていく。
「まず第一脅かしポイント」
棒でグリグリ。
「ケンケン、由美、りーなチーム」
ケンケン、
メガネをクイクイ。
「ほほう」
由美、
不安そう。
「わ、私怖がらせるの苦手だよぉ・・・・」
真子はニヤリ。
「ゆみっちは簡単だよ」
「ちょっと耳貸して」
ゴニョゴニョと耳打ち
話を聞いた由美は驚きの顔をする。
「えぇっ!?」
「わかったわ、やってみるわ」
莉英奈はジュースを飲みながらボソッと言う。
「わたし絶対やる流れになってるよね」
「りーなはナース幽霊ね」
「なんで?」
「似合うから」
「意味わかんない」
⸻
「第二脅かしポイント!」
棒で線を引く。
「玲子&香織チーム!」
玲子は力強いガッツポーズを見せる。
「よっしゃ来た!!」
香織は苦笑い。
「わたし何役・・・・?」
「かおりんはジェイソンね」
「えっ?13日の金曜日?」
「玲子は貞子」
玲子は首を傾げる。
「貞子?・・・・誰それ?」
真子も首を傾げる。
「ん?・・・・・・・・」
(あれ?・・リング、まだやってない?)
「あっ!ごめん、お岩さんで」
「あー、皿数えるやつね」
⸻
「第三脅かしポイント!」
「澪&理絵チーム!」
澪は嫌な予感しかしない顔をする。
「わたし絶対怖がる側だよね?」
「大丈夫」
真子は澪の肩にポンと手を乗せる。
「澪はゾンビ役ね」
「嫌だぁぁぁ!!」
理絵がクスクス笑う。
「じゃあ私は日本人形かな?」
「理絵ちゃん普通に似合いそう・・・・」
由美が震える。
⸻
そして――
真子が、
ゆっくりと振り返る。
「最後」
一拍。
「黒の三連星チーム」
MMORPG三人衆は腕を組む。
ザワッ・・・・!!
周りは落ち着かない。
「ついに・・・・」
「我らの真価を見せる時」
「闇の軍勢、出陣である」
真子、
満足そうに頷く。
「オルテガは頭なしデュラハン」
「ん?デュラハンは頭なし当たり前だろ?」
「ガイアは胴体なしデュラハン」
「えっ?それ・・デュラハン?」
「マッシュは足なしデュラハン」
「もはやデュラハンじゃない」
一同爆笑
澪がお腹を抱えながら三人衆を指差す。
「三人衆にピッタリじゃーん」
「三位一体・・・・ぷっ!ウケる」
三人衆はというとーー
案外気に入っていた。
「うむ、真子ギルマスよ良いセンスだ」
オルテガは腕を組んで頷く。
ケンケンは素でツッコミを入れる。
「団結力が良いの悪いのか・・・・」
「よくわからんでござる・・・・」
マッシュが顎に手を当てて考えていた。
「ギルマスよ、頭とか胴体とか足とか、どうやって消すのだ?」
真子はニヤリ顔で答える。
「それは私にまっかせなさーい」
そう言って恒例の指パッチン!!
すると三人衆の頭、胴体、足がなくなる
「「「「「んぎゃーー!!こえーーーっ!!」」」」」
オルテガはガイアの胴体が部分が透けているのに驚く。
「おおっ、これは怪奇な」
ガイアはオルテガを見て驚く。
「オルテガの頭はないのに声は聞こえる」
マッシュは頭と胴体が浮いていて上下に揺れている。
「オルテガ、ガイア、凄いぞ、飛んでも足は見えないぞ」
一同、ドン引きである。
真子だけはドヤ顔で三人衆を見ていた。
⸻
その後――
川辺は、
完全に文化祭前日のような空気になっていた。
白い布を被る者。
顔へメイクする者。
木へ糸を張る者。
無駄にスモーク演出を考える者。
特に三人衆。
「我らの登場SEが必要では?」
「霧演出も欲しい」
「できれば雷も」
そんな様子を見て玲子のツッコミが飛ぶ。
「お前ら肝試しをなんだと思ってんの!?」
その少し離れた場所。
真子はスマホを操作していた。
【今から肝試しやるよー】
【暇な人ー、カモーン】
【震え上がらせてやるぜーぃ】
「位置情報と共に送信っと・・」
数秒後。
ピコンピコンピコンッ!!
大量の既読と返信。
真子、
ニヤァ・・・・。
「・・・・よし」
スマホを閉じる。
「獲物が来るよー♪」
「さーて!狩りの時間のー」
「始まりだよーー!!」




