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人生をやり直しますか? 〜YES or NO〜 【みんなの心の中が読み取れる少女は、やり直し高校生活でやりたい放題です】  作者: 相賜 奏合


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[88]

屋上――


フェンス越しに見える空は、どこまでも青かった。


吹き抜ける風。


その中で――


真子と入来は、向かい合っていた。


しばらく沈黙。


やがて、入来が大きくため息を吐く。


「はぁーー・・・・」


頭をガシガシ掻きながら、

屋上入口へ視線を向けた。


「ついてくるなって言ったのによぉ・・・・」


入口付近。


扉の陰。


3年4組の生徒たちが、

これでもかというくらい隠れていた。


「「「「「・・・・」」」」」


完全にバレている。


玲子、小声。

「やべっ、気づかれてる?」


澪、ヒソヒソ。

「気づかれてるね・・」

「人数多すぎなんよ・・・・」


理絵は頭だけ出ている。

「だって、気になるじゃん・・・・」


真子はそんな様子を見て、

肩を竦めた。


「まぁ、仕方ないよ」

「“ついてくるな”って言われたら――」


一拍。


「ついてくるのが人の心情だし」


そう言って、

軽く手を上げる。


パチーーン


指を鳴らした。


その瞬間――


風が、

ふわりと揺れる。


入来が目を細めた。

「・・・・なんだ今の」


真子はあっさり答える。

「これでみんなには声、聞こえないよ」


屋上入口の玲子たちは顔を顰める。


「・・・・?」


「なんか急に静かになった?」


「口動いてるのに聞こえない!」


「えっ、なにこれ怖っ!」


プチパニック。


入来は、

ヒュ〜っと口笛を吹く。

「相変わらず、とんでもねぇな」


真子は少しだけ笑った。

「んで?」

「何が聞きたいの?」


その瞬間――


入来の表情が変わる。


いつもの軽さが消えた。


真剣な目。


そして。

「・・・・おい」


低い声。

「お前」


一拍。


「何歳の時に、何歳からやり直してるんだ?」


急に屋上に突風が吹く。


フェンスが、ガタンッと揺れた。


普通なら動揺する問い。


だが――


真子は、驚くことなく静かに、真っ直ぐ答える。

「44歳の時に・・」


少しだけ空を見る。

「11歳・・・・」

「小学6年生からだよ」


入来は予想以上の回答に固まる。

「・・・・は?」


数秒遅れて、

頭を抱えた。

「はえぇな・・・・」

「そんな前からかよ・・・・」


真子は少しだけ首を傾げる。

「ショーくんは・・」

「1年くらい前からかな?」


入来は舌打ち混じりに笑う。

「・・・・知ってたのかよ」

「なんで言ってこなかった?」


肩を竦める真子。

「言ったって、何も変わらないじゃん」


風が吹く。


入来はフェンスにもたれながら、空を見上げた。


「・・・・なぁ」

「なんでお前だけそんなチート能力持ってんだよ」

「未来見えて、結界張れて、人の心読めて」


真子は、

少しだけ困ったように笑う。

「最初は私もなかったよ」


「人の心聞こえてきたのは中2くらいかな」

「タイムリープして、2年弱くらいしてから」


「他は修行したからね・・」

「大変だったんだよ・・・・」


真子の言葉に入来は眉をひそめる。

「2年か・・・・」

「長ぇな・・・・」


真子は遠くを見るような目をした。

「こんな能力」


小さく呟く。


「ない方がいいよ・・・・」

「変なことばっか巻き込まれるし」


だが入来は鼻で笑った。

「いやいや、そんな風には見えねぇぞ」


真子を見る。

「お前、その能力で楽しんでるだろ?」


真子、

ぷくっと頬を膨らませる。

「ショーくーん」

「乙女の悩みは察しないとモテないぞっ」


入来は即答する。

「モテる気ねぇよ」


風が、少しだけ止む。


入来は俯きながら、ゆっくりと言葉を続けた。

「俺は・・・・」

「冴子が、あの件から立ち直ってくれればそれでいい」


「あと――」


少しだけ笑う。

「俺が楽しく生きられれば、それでいい」


そして、顔を上げ真子を見た。

「そのためには」

「お前みたいな能力が欲しいんだよ」


真子はじーっと入来の顔を見つめる。


長い沈黙。


やがて――


ゆっくりと、首を横に振った。


「・・・・ショーくんは」

「能力、持たない方がいいよ」

「碌なことにならない」


入来の表情が歪む。


唇を、強く噛み締める。

「・・・・お前が」


低い声。

「決めるんじゃねぇよ」


真子は、

静かに目を伏せた。


「ショーくん・・・・」


小さく息を吐く。


そして。


「ここが、大きな分岐点だよ」


「・・・・はぁ?」

入来は眉をひそめる。

「なんの分岐点なんだよ」


真子は、悲しそうに笑った。


「能力を欲するか・・」

「欲さないか・・」


風が吹き真子の髪が揺れる。


「私は――」


ゆっくりと。


「欲さない方を、勧めるよ」


入来は、返す言葉を失った。


ただ――


真子を見る。


その顔を。


今まで一度も見たことがないほど、

悲しそうな顔をしていた。


その空気に。


その表情に。


入来は、

耐えられなくなる。


「・・・・チッ」


小さく舌打ち。


そして、背を向け屋上入口へ向かって歩き出す。


その瞬間――


入口付近で盗み聞きしていたクラスメイト達が、

一斉に慌て始める。


「やばっ!!来る!!」


「逃げろーー!!」


「バレるバレる!!」


ドタドタドタッ!!


蜘蛛の子を散らすように、

全員が教室へ逃げていった。


入来は、

その様子を見て小さく笑う。


だが――


何も言わなかった。


ただ静かに、屋上を後にした。


残されたのは――


真子ひとり?


真子はふと目を横に向ける

「2人とも聞いてたよね・・・・」


その言葉にスッと2人の姿が現れる。

由美とケンケンだった。

2人は悲しい顔をしていた。


真子は笑みを見せる。

「まさか私の結界に結界を使って入り込んでくるって・・」

「ゆーみ、やるようになったねー」


由美は褒められているが嬉しい顔を見せることは出来なかった。

「まこち、タイムリープしてやり直してるの?」


真子は溜息をつく

「そうだね・・・・でもこれは誰にも言っちゃダメ」

「言っちゃうと消される可能性があるから」


ケンケンと由美は顔を青ざめる。

「えっ?」

「消される?」

「誰に?」


真子はとぼける

「誰でもいいじゃん、言わなきゃいいのっ」


2人は無言で首を縦に振った。


「2人とも、先に教室に戻っといて」

「ちょっと1人になりたいの」


真子の言葉に異様な空気を感じて、2人はなにも言わず、入口へと歩み出した。


そのとき、


「あっ、ケンケン、ゆーみ!」

真子が呼び止める。


2人は振り返って真子を見る。


真子は真剣な顔をしていた。

「今日は夜から数時間雨が振る」

「雨が降っている間、由美は結界を張って

ケンケンと2人、雨が止むまで結界の中にいること」


「いいね」


2人は何故真子がそんな事を言うのか理解できなかったが、無言で頷き屋上をあとにする


屋上で1人になった真子は、仰向けで大の字に寝そべり空を見つめていた。


空は薄暗い雲が掛かり始めていた。

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