[85]
昼休み――
3年4組は、異様な盛り上がりを見せていた。
「いやいやいや!!」
「なんで僅差なんだ!?」
「今年どうしたうちのクラス!?」
「夢かこれ!?」
完全にお祭り騒ぎである。
一方――
スポーツ推薦組の空気は最悪だった。
「・・・・おい」
リーダー格の男子が、険しい顔で周囲を見る。
「お前ら、ちょっと気、抜きすぎじゃねぇか?」
野球部員が即反論する。
「抜いてねぇって!!」
サッカー部員も苛立っている。
「マジで今日おかしいんだよ!」
「なんか感覚ズレるっていうか・・・・」
陸上部エースが地面を見る。
「・・・・地面、滑ったよな」
「だよな!?」
「俺も思った!!」
「玉入れもおかしかったし・・・・」
皆、納得できない顔をしていた。
その様子を少し離れた場所から見ていた3年4組。
玲子、小声。
「・・・・完全に混乱してる」
澪はニヤニヤ。
「焦ってる、焦ってる」
莉英奈は真子を見る。
真子は、
焼きそばパンをモグモグしていた。
「・・・・まこち」
「ん?」
「なんかしてる?」
真子、
モグモグ。
「さぁ?」
玲子、
ジト目。
「絶対なんかしてる」
真子はニコッと笑う。
「証拠ある?」
全員、
「あっ、こいつやってるわ」
確信した。
⸻
午後の部。
最初の競技は障害物競走。
スポ薦組代表、
陸上部エース。
誰もが1位を確信していた。
「今度こそ行くぞ!!」
スタート。
爆速。
「速ぇぇぇぇ!!」
会場が沸く。
平均台。
完璧。
ネットくぐり。
完璧。
パン食いゾーンへ突入。
「もらったぁぁぁ!!」
――その瞬間。
パンが、
スゥッと横移動。
「・・・・は?」
空振り。
「えっ?」
もう一度。
パクッ。
スゥッ。
「はぁぁぁ!?」
観客、大爆笑。
パンだけ、
めちゃくちゃ逃げる。
実況も困惑していた。
「こ、これは・・・・」
「パンが逃げています!!」
莉英奈、
腹を押さえて笑いを堪えている。
「ダメ・・・・」
「実況で笑う・・・・」
その横。
真子が、
指をくるくる回していた。
「パンって自由だからねー」
「自由じゃないから」
即ツッコミ。
⸻
騎馬戦。
スポ薦組、
本気。
「ここで流れ変えるぞ!!」
「うおおおおお!!」
突撃。
――だが。
スポ薦組の騎馬だけ、
なぜか足並みが噛み合わない。
「おい右!!」
「そっち左だって!!」
「うわっ!!」
ドシャアアア!!
自滅。
3年4組、
唖然。
澪、
震えながら言う。
「・・・・怖っ」
玲子も引いている。
「ここまで来ると逆に怖い」
真子、
スポドリ飲みながら。
「団結力って大事だねー」
莉英奈、
冷めた目。
「お前が言うな」
⸻
そして――
最終競技前の得点発表。
ドラムロール。
会場全体が静まり返る。
「現在の得点!!」
「3年4組――240点!!」
大歓声。
「スポーツ推薦組クラス――245点!!」
どよめき。
たった5点差。
会場騒然。
「マジかよ・・・・」
「3年4組、今年どうなってんだ!?」
「リレー次第じゃ逆転あるぞ!!」
3年4組も、
完全に空気が変わっていた。
午前までの諦めムードはない。
玲子が、
興奮気味に真子を見る。
「・・・・まこち」
「んー?」
「ほんとに」
「言った通りになったよ・・・・」
真子は、
ニヤリと笑う。
「でしょ?」
澪がゴクリと唾を飲む。
「・・・・あと、リレーか」
由美、
ガクガク震えている。
「む、無理だよぉ・・・・」
「相手、陸上部だよ!?」
ケンケンが眼鏡をクイッと上げる。
「だが・・・・」
「ここまで来たのでござる」
MMORPG三人衆、
一斉に立ち上がる。
「ギルドの誇りにかけて!!」
「我ら、駆け抜ける!!」
「ジェットストリームアタックの時は来た!!」
クラス全員、
ドン引き。
「・・・・いや」
「何言ってんだこいつら」
そんな中――
真子が、静かに立ち上がった。
「大丈夫」
全員が真子を見る。
真子は、
ニヤァ・・・・と笑う。
「私たちは――」
一拍。
「勝てる」




