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人生をやり直しますか? 〜YES or NO〜 【みんなの心の中が読み取れる少女は、やり直し高校生活でやりたい放題です】  作者: 相賜 奏合


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[82]

3年生――


それは、“選ばなければいけない時期”。


進学か、就職か。


夢か、現実か。


答えのない問いに、

それぞれが、頭を悩ませていた。


そんな中――


どうしても、未来を知る者に頼りたくなる。


「石本さん、ちょっといい?」


「進路でさ、相談あるんだけど」


「私、このままでいいのかなって・・・・」


次々と。


真子の元へとやってくる。


未来が“見える”少女。


答えを知っている存在。


――頼らない理由がなかった。


だが。


真子は、乗り気ではなかった。


「んー、好きにすれば」


「どっちでもいいんじゃない」


「まあ、なんとかなるよ」


すべて――


はぐらかす。


適当、投げやりに受け止められる。


当然、納得できるはずもなく。


「いやいや、ちゃんと教えてよ!」


「石本さんなら分かるでしょ!?」


食い下がる者もいた。


だが、それでも――


真子は、答えなかった。


(見えてるよ)


(全部)


(でも――)


(それ、言ったら終わりじゃん)


未来がわかる人生。


答えが決まっている選択。


そこに――


“面白味”はない。


(苦しんで、悩んで、選んで)


(失敗して、成功するから――)


(人生、面白いんでしょ)


だから。


言わない。


言えない。


そして――


ある日。


教室の入口に、1枚の紙が貼られていた。


【石本真子に進路相談をすることを禁止する】


「誰が貼ったんだよこれ!!」


「せっかく頼ろうと思ったのに・・・・」


「チェッ、期待はずれだな!」


ざわざわ。


苦笑。


そして――


ピタリと。


相談は止まった。


静寂。


平穏。


「・・・・ふぅ」


久しぶりに。


何もない時間。


誰にも話しかけられない、普通の教室。


真子は、机に突っ伏した。


(やっと、静かになった・・・・)


莉英奈は静かに言った

「張り紙、効果あったね」


真子は突っ伏したまま、顔だけ莉英奈に向ける。

「りーなが貼ってくれたんだね」


莉英奈は肩を竦める。

「未来がわかる人生なんて面白くないじゃん」


真子は驚いた顔をして莉英奈を見た。


そんな真子を見て莉英奈は首を傾げる。

「ん?まこち?どうしたの?」


真子は同じ考え方を持った者が身近にいたことに嬉しくニコリとした。

「ううん、なんでもない」


莉英奈は真子の笑顔の意味がわからず、再び読みかけの雑誌に目を向けた。


しばらくしてーー


「いーしーもとー」


気の抜けた声が、教室に響く。


原田だった。


「放課後、職員室に来なさーい」


「はーい」


適当な返事。


特に気にも留めない。


――そして、放課後。


職員室。


ざわつく空間の中。


真子は、原田の前に立っていた。


原田は、深いため息をつく。


そして――


一枚の紙を、ひらりと投げた。


「進路希望の件なんだけどな」


紙が、真子の手元に届く。


「いしもと?」

「お前、俺をバカにしてるのか?」


真子は、紙を拾いながら首を傾げる。

「えっ?」

「別にバカにしてないよ?」

「ちゃんと書いたけど?」


その言葉に――


原田のこめかみがピクリと動く。

「じゃあなんだよ、これ」

「ふざけてんのか?」


真子は即答。

「ふざけてない」


「いや、ふざけてるね」


「ふざけてないって」


空気が、ピリつく。


周囲の教師たちが、ちらちらと視線を向ける。


我慢の限界をむかえた原田が声を荒げた。

「ふざけんな!!」

「希望先が――」


一拍。


「“お嫁さん”ってなんだよ!!」

「小学生かっ!!」

「いや!ちまたの小学生でもこんなん書かんわ!!」


シーーン――


職員室が、一瞬で静まり返る。

皆が2人を見る。


「・・・・えっ?」


「お嫁さん?」


「それは・・ちょっと・・・・」


クスクスと笑いが漏れる。


真子は、不貞腐れた顔で言う。

「だってさー」

「大学行っても意味ないし」

「就職もしたくないし」


肩を竦める。

「じゃあ、お嫁さんになるしかないじゃん」


周囲、ざわざわ。


原田は頭を抱えた。

「せめて働けよ・・・・」

「働いて金貯めて、親孝行しろよ」


真子は、は〜ぁ、と長い溜息。

「もう、充分あるし」

「働かなくていいくらい」

「親にもお金渡してるし」


「だから――」


少しだけ、視線を逸らす。


「やること、ないの」


少しだけ――


その声は、空っぽだった。


その言葉に。


原田は、言葉を失いかけるが――


すぐに首を振った。

「・・・・だからってダメだ」

「これはダメだ」


紙を指で叩く。

「書き直しなさい」

「ちゃんと現実的なやつを」


「今すぐ」


真子は、露骨に嫌そうな顔をする。


「・・・・」


仕方なさそうにペンを取る。


カリカリ、と。


数秒。


書き足す。


そして――


紙を、原田に突き返した。


「はい」


「これでいいでしょ!」


そう言い放ち、


そのまま踵を返す。


「ちょ、おい・・・・!」


止める間もなく。


真子は、職員室を出ていった。


静まり返る室内。


原田は、溜息をつきながら紙を見る。


そこに書かれていたのは――


【うらないし】


(うらないし?)

(・・・・は?)

(いや・・そこ、ひらがなかよ・・・・)


「・・・・はぁ」

もう一度、深いため息。


「まぁ・・・・」


小さく呟く。

「お嫁さんよりは、マシか・・・・」


隣の席の女性教師がクスクス笑う

「原田先生、大変ですね」


原田は頭を掻く。

「まぁ・・・・」

「あの子はなんでも出来てしまう奴なんです」

「たまに私と同世代のような行動をしたと思ったら」

「こんな感じの子供っぽいところもある」


「多重人格なんじゃないかと思うことがありますよ」


一瞬、間を置く。


「・・・・いや」

「違うな・・・・」

「どれも“本物”なんでしょうね」


女性教師は口を開かず原田の話を聞いている。


原田は少し遠くを見つめる。


「この世に生まれているのに」

「この世にいない存在なのかとも思わせる・・・・」


「不思議な奴なんです」


原田はふと我に返る。

「あっ、すみません」

「変なこと言って・・」


女性教師はクスクスと笑っていた。

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