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人生をやり直しますか? 〜YES or NO〜 【みんなの心の中が読み取れる少女は、やり直し高校生活でやりたい放題です】  作者: 相賜 奏合


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[74]

沢池神社から少し離れた小屋。


6人は、そこに押し込まれていた。


外は静かだった。


いや――静かすぎた。


由美は、ケンケンが連れ去られてから、ずっと泣いていた。


肩を震わせながら、声を殺して泣いている。


誰も、声をかけられない。


ただ、隣にいることしかできなかった。


重い空気。


息が詰まりそうなほどの沈黙。


(・・・・このまま、1人ずつ・・・・)


誰かが言いかけて、言葉を飲み込む。


わかっている。


口にした瞬間、それが現実になる。


香織が、泣きそうな顔で呟く。

「私たち・・帰れないの・・?」


玲子は、無理やり口角を上げる。

「帰れるよ・・」


「帰れるって・・」


「・・・・だからさ、みんなで考えよ」


その声は、明るさを装っていた。


だが――


震えていた。


理絵が俯いたまま言う。

「こんな離れ島で・・」


「誰も助けに来ないよ・・」


「助からないよ、私たち・・・・」


シク……シク……


泣き声だけが、小屋に響く。


その時――


莉英奈が、ゆっくりと立ち上がった。

「・・ここから、逃げよう」


全員が顔を上げる。


だが、その目にはまだ光が戻っていない。


莉英奈は続ける。

「明日の昼・・船が来るはず」


「見つからないように、乗り込む」


澪が首を横に振る。

「でもさ・・」


「あの船長とかも怪しくない?」


「見つかったら、絶対戻されるって・・」


香織は頭を抱える。

「無理だよ・・」


「私たち、どうやって・・・・」


再び、空気が沈む。


玲子が、小さく呟いた。

「・・・・こんな時、まこちが居たらな・・」


その一言で――


全員の頭の中で、同じ顔が浮かぶ。


ため息。


誰も、言葉を続けられない。


その時だった。


莉英奈の中で――

「まこ・・・・」


何かが、引っかかった。


思い出す・・・・


ーーーー


出発前。


駅のホーム。


皆が新幹線に乗り込む。


莉英奈が最後に乗り込もうとした。


その時ーー


真子が、莉英奈を呼び止めた。


「りーな」


莉英奈が振り返る。


真子は、いつもの軽い調子で――


だが、どこか真剣な目で言った。


「逃げるなら、日が登る前で東だよ」


「・・・・えっ?」


意味がわからない。


莉英奈は軽く手を挙げて、そのまま乗り込んだ。


ーーーー


莉英奈が、小さく呟く。


「・・逃げるなら・・日が登る前・・東・・」


全員が顔を上げ、莉英奈を見る。


「え?」


「なにそれ?」


莉英奈の声が、少し震える。


「まこ・・・・言ってた」


「出発前に・・」


「逃げるなら、日が登る前に東だって・・」


玲子の目が見開かれる。

「えっ、それって・・」


「今のことじゃないの?」


澪が息を呑む。

「まこち・・見えてたんだよ・・」


「私たちの未来・・」


由美が、涙を拭いながらスマホを取り出す。

「方角・・・・」


画面を見つめる。


少しして――


ゆっくりと指を差した。


「・・東は、こっち・・・・」


莉英奈もスマホで地図を開く。


現在地。


島の構造。


港の位置。


そして――


固まる。


「・・・・えっ・・・・」


玲子が不安そうに聞く。


「りーな・・?」


莉英奈の顔が、曇る。


「東は・・・・」


「港と、真逆だ・・」


沈黙。


わずかに芽生えた希望が、


音もなく崩れる。


香織が、力なく呟く。


「・・やっぱり・・無理だよ・・・・」


誰も、反論できない。


その時――


「・・・・私は、信じる」


澪だった。


全員が、澪を見る。


澪は、まっすぐ前を見ている。

「だって、まこち・・」


「私を助けてくれたもん」


「ストーカー被害の時だって・・」


拳を、ぎゅっと握る。


「今回だって・・きっと・・」


少し、声が震える。


それでもーー


「・・・・助けてくれる」


静かに、言い切った。


その言葉が――


ゆっくりと、空気を変えていく。


玲子が、小さく笑う。


「・・・・だな」


由美も、涙を拭きながら頷く。


理絵と香織も、顔を見合わせる。


そして――


莉英奈が、顔を上げた。

「・・・・よし」


一歩、踏み出す。

「東へ行こう」


「まこを信じる」


その言葉に――


全員が、頷いた。


外は、静かだった。


だが――


遠くの空は、わずかに色を変え始めていた。


夜は、終わろうとしている。


それが――


希望なのか。


それとも――


絶望なのか。


まだ、誰も知らなかった。

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