[71]
指名された7人は、他の生徒たちとは別に――
少し離れた場所に停められていたワンボックスカーへと誘導された。
クラスメイトたちが乗り込むバスとは、明らかに別扱いだった。
「・・・・なんか、完全に分けられてるよね」
玲子が小声で呟く。
誰も否定しない。
重い空気のまま、7人は車に乗り込んだ。
ドアが閉まる。
ガーー、ガシャン――
妙に、その音が大きく響いた。
桐谷が運転席に乗り込もうとした、その時。
着信音。
「・・・・ちょっと、失礼」
そう言って桐谷は車から離れ、少し距離を取って電話に出る。
莉英奈は、さりげなく窓を開けた。
風の音に紛れながら、耳を澄ます。
桐谷の声は小さい。
「・・はい、桐谷」
「はい、7人は別で車に乗せて――」
「・・・・えっ?」
「はい、はい・・わかりました」
一瞬、間。
「・・・・では、沢池神社へ向かいます」
通話が切れる。
莉英奈は静かに窓を閉めた。
何事もなかったかのように。
そして、小さく言う。
「派出所じゃない・・・・」
全員が反応する。
「え?」
「今・・神社って言った」
玲子が目を見開く。
「えっ?聞こえたの?」
莉英奈は、無言で頷く。
空気が変わる。
そのタイミングで、
桐谷が戻ってきた。
何事もなかったように運転席に座り――
エンジンをかける。
ブゥン・・
車が、ゆっくりと動き出す。
だが。
誰も喋らない。
耐えきれず、
莉英奈が口を開いた。
「・・警官さん」
「派出所まで、どれくらいかかるんですか?」
沈黙。
エンジン音だけが響く。
誰も動かない。
誰も息を吐かない。
ただ、桐谷の返答を待つ。
桐谷は頭を掻いた。
「あー・・・・」
少しだけ言葉を選ぶようにして。
「派出所じゃなくてな」
「沢池神社ってとこに行く」
一瞬、空気が止まる。
莉英奈が、ゆっくり聞く。
「・・なぜ・・ですか?」
沈黙。
タイヤの音だけが続く。
やがて。
桐谷がぽつりと口を開いた。
「・・・・狐巫女様がな」
「神社に連れて来いって・・」
玲子
「・・・・は?」
目が点になる。
「狐巫女って・・なにそれ・・・・」
澪が半笑いで言う。
「新しい宗教?」
ケンケンは真顔だった。
「・・この島、不気味でござるな」
理絵は不安そうに肩を抱く。
「なんか・・嫌な予感しかしないんだけど・・」
桐谷はそれ以上、何も言わない。
ただ一言だけ。
「・・・・まぁ、着けばわかる」
それで終わりだった。
会話が途切れる。
再び、沈黙。
車内に流れる空気は、
さっきまでとは明らかに違っていた。
"神社"
そして――
“狐巫女”
莉英奈は、歯を食いしばる。
(怪しすぎる・・・・)
(でも、決定打がない・・・・)
拳を、膝の上でそっと握る。
(こんな時に――)
ふと、頭に浮かぶ顔。
(まこちがいれば・・・・)
(すぐに見抜いてくれるのに・・・・)
莉英奈は、窓の外へ視線を移す。
断崖の道。
細く、曲がりくねった山道。
ガードレールの向こうは、すぐ海だった。
(まこち・・・・)
(今、なにしてるのかな・・・・)
莉英奈は窓の外の景色を眺めながら思い耽るのであった。




