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人生をやり直しますか? 〜YES or NO〜 【みんなの心の中が読み取れる少女は、やり直し高校生活でやりたい放題です】  作者: 相賜 奏合


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[61]

春休み。


学校は、いつもより静かだった。


廊下には生徒の姿がなく、窓から差し込む春の光だけが床をゆっくりと滑っている。


掲示板には「新学期準備」の紙が貼られ、

教室の後ろには新しい教科書の段ボールが積まれていた。


誰もいない教室。


机と椅子はきちんと並び、黒板は綺麗に消されている。


まるで――


次の学年を迎える準備を、静かに待っているようだった。


季節は、少しずつ春へ向かっている。


立ち止まってしまい、

そのまま同じ場所に残る者もいるが、

ほとんどは学年が上がっていく。


時間は止まらない。


人も、場所も、少しずつ変わっていく。


そんな静かな春休みのある日――


真子たちは、駅前の商店街に集まっていた。


学校は静かだったが、町は対照的に賑わいを見せている。


駅前の商店街では「春の福来祭」と書かれた旗が風に揺れていた。


焼きそばの匂い。

お客を呼び込む声。

福引きのガラガラ音。


町内では毎年恒例のお祭りである。


その商店街を歩いていたのは――


真子、玲子、莉英奈、香織、理絵、澪、由美、そしてケンケン。


真子が腕を組んで言う。

「いやー、春休みって暇だよね」


澪がクレープを頬張る。

「暇だから来たんじゃん」


香織は屋台を見ながら笑う。

「毎年恒例で賑わってるね」


その時。


ケンケンが急に立ち止まった。


「・・・・む」


真子が振り向く。

「どしたのケンケン」


ケンケンは商店街の端を指差した。


そこには誰も居ないが、

小さなテーブルが置いてある。


その上には段ボール。

そこに手書きの紙。


【占い 100円】


玲子が笑った。

「なにこれ、怪しっ」


ケンケンは真子を見た。

「真子殿」

「これは真子殿の出番では?」


真子が首を傾げる。

「え?」


ケンケンは真顔で言う。

「真子殿、霊視でござる」


由美が吹き出した。

「たしかに」


理絵も笑う。

「ガチ占いじゃん」


玲子はニヤッと笑った。

「まこち、やれよ」


真子

「えー?」


莉英奈が肩をすくめる。

「暇なんでしょ?」


香織も笑う。

「やってみたら?」


真子は少し嫌そうな顔をするが、

周りがやるしかない空気になっていた。


「わかったよ・・じゃあ、やってみるよ」



数分後。


テーブルの前に置物のように座る真子。


紙を書き直す。


【霊視占い 100円】


ケンケンが呼び込みを始める。


「霊視占いでござるー!」


「当たるでござるー!」


玲子が笑う。

「商売人かっ、お前」



最初の客は、主婦だった。


「結婚指輪を失くしちゃって・・」

「旦那にバレたら怒られるのよ」

「どこにあるか、占ってくれない?」


真子は一切迷わず言った。


「財布、出して」


「えっ?」


主婦は戸惑いながらも、バッグから財布を取り出す。


真子はそれを指差す。


「小銭入れの中、破れてない?」

「そこから入り込んでる」


主婦は慌てて中を確認する。


「あっ、ほんとだ、破れてる・・」

「えっ、ちょっと待って・・」


指を入れて探る。


そして――


「あった!!」


指輪を取り出した。


周囲がざわつく。


玲子が顔を引きつらせる。


「マジ・・・・?」

「やっぱヤバいよ、まこち・・・・」


真子はドヤ顔で玲子を見る。


そのやり取りを見ていた通行人が足を止める。


気づけば、周りに人だかりができ始めていた。



次に座ったのは、男子高校生だった。


「恋愛運、見てもらえます?」


真子は男子の顔をじっと見る。


少しだけ間を置いて――


言った。


「彼女、できるよ」


男子の顔が一気に明るくなる。


「マジ!?」

「いつ!?」


真子はあっさり答える。


「いま」


男子

「・・・・は?」


周囲からざわめきが起こる。


「いやいや」

「ありえないだろ」


真子は周りを見渡し――


ひとりの女の子を指差した。


「その子」


クレープを食べていた女子が、

視線に気づいて振り返る。

「え?」


男子も振り向く。

「え?」


玲子も混乱する。

「え?」


真子はさらに追い打ちをかける。

「あの子ね、あなたのこと好きなの」

「ねっ?」


その一言で、女の子の顔が一気に赤くなる。


数秒の沈黙のあと――


小さく頷いた。


「・・・・うん」


周囲がざわつく。


「マジで!?」

「うそだろ!?」


そして――


本当に、その場で付き合うことになった。


誰もがドン引きである。



真子の周りを取り囲む人集りは、真子の能力に驚愕し、認めざるを得ない空気だった。


しかし、その空気を切り裂くように、男の声が響いた。


「おいおい、そんなヤラセ誰が信じるんだよ」


20代くらいの男が、もう1人と一緒に前に出てくる。


「くだらねーな」


周囲が少し静まり返る。


真子は気にした様子もなく口を開いた。


「右のあんた」


指を差す。


「今からソフトクリーム、服にベッタリつくよ」


そして、もう1人を見る。


「左の人は――」

「怖い人に連れて行かれる」


2人は顔を見合わせて笑った。


「は?」

「意味わかんねーこと言ってんじゃねーよ」


「くだらねー、行こうぜ」


「おいっ、どけよ、邪魔だっ」


そう言って人混みを掻き分けて歩き出す。


――その瞬間。


ドンッ


ソフトクリームを持った子供がぶつかった。


「うわっ!」


白いクリームが、男の服にベッタリと付く。


「うわああああ!!」


その声に驚いたもう1人が、後ろへ下がる。


その足が、誰かの足を踏んだ。


「痛っ」


低い声。


振り返ると、いかにもな男が立っている。


「おい・・ちょっと来いや」


「えっ・・いや・・・・」


腕を掴まれる。


「ちょっ・・・・!」


そのまま、ずるずると連れていかれる。



静寂。


誰も言葉を発せない。


そして――


1人が、ぽつりと呟いた。


「・・・・すげぇ」


次の瞬間。


「うぉぉぉぉぉ!!」


大歓声が巻き起こる。


「なんだこれ!!」

「言った通りだよー!!」

「マジで当たってる!!」


商店街は、一気に熱狂に包まれた。


噂は瞬く間に広がっていく。


「西岡商店街に必ず当たる占い師がいる」



その後も、真子は学校終わりに商店街に駆り出されて占いを続ける。


知らぬ間に異名がつく。

『西岡の母』と・・・・


行列を捌く真子を横目に、


澪が素で突っ込む。

「高校生が母っておかしくね?」


莉英奈が溜息をつく。

「もうさ、なんでもいいんじゃね」


玲子も呆れる。

「お前もう人生相談所じゃん」


理絵はジュースを飲みながら言う。

「みんな未来気になるんだね」



その時。


後ろから声がした。


「石本ォォォォ!!!」


全員振り向く。


そこにいたのは――


担任の原田だ。


腕を組んで怒っている。


「お前なにしてるんだ?」


真子は素で答える。

「社会貢献」


玲子が即答

「絶対違う」



その日。


商店街の占い屋セットは教師に回収された。


しかし――


商店街ではしばらくこんな噂が流れた。


『春休みに現れた伝説の占い師』

『的中率は驚異の100%』


西岡市民は口を揃えて言う。


『あの娘は神の子』


――と。


その頃、本人は――


担任にガチで怒られていた。

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