[58]
石田一成は怒っていた。
いや、
怒りを通り越して、もはや執念に近い。
玲子にも。
優子にも。
振られた。
原因はあいつだ。
石本真子。
「・・・・あいつのせいだ」
石田は歯を食いしばる。
あいつが余計なことを言わなければ。
邪魔さえしなければ。
俺は――
「絶対うまくいってたんだ」
そう思っていた。
だから決めた。
復讐してやる。
石田の周りには、同じように素行の悪い男子が数人集まっていた。
「で、どうすんだよ?」
1人が聞く。
石田はニヤリと笑った。
「簡単だ」
「人気のない場所に呼び出す」
「裸の写真でも撮れば、あいつ終わりだろ」
男たちは下卑た笑いを浮かべる。
「そして・・・・」
石田は声を落とす。
「あいつを、俺らのおもちゃにしてやんよ」
全員が笑った。
計画は単純だった。
⸻
放課後。
真子が1人になるタイミングを狙う。
そして――
人気の無い所に連れ込む。
あとは好き放題するだけ。
それだけだ。
⸻
放課後。
帰り道。
真子は莉英奈と澪と歩いていた。
「じゃあ、また明日ー」
「ばいばーい」
2人と別れる。
真子は1人になった。
その瞬間。
物陰から男たちが現れる。
石田が声をかけた。
「おい、石本」
真子は振り返る。
「ん?」
石田は憎しみが籠った顔をしている。
「俺のこと覚えてるよな?」
真子はしばらく記憶を辿って考える。
「あっ、浮気男だっ」
「おまっ、こいつ、絶対許さん」
石田は顎で示した。
「ちょっとツラ貸せや」
男たちが真子を囲む。
真子は石田をずっと見つめていた。
そして。
「・・・・いいよー」
素直に歩き出した。
男たちは聞き分けの良い真子に一瞬驚いた。
だがすぐに笑う。
「話が早いじゃん」
真子は何も言わず、ついていく。
その様子を――
偶然、ケンケンが見ていた。
「・・・・む?」
帰宅途中だったケンケンは立ち止まる。
真子殿?
石田。
ガラの悪そうな男数人。
そして人気のない方向へ。
ケンケンは眉をひそめた。
「・・・・なにやらよからぬ予感・・・・」
すぐにスマホを取り出す。
電話。
相手は――入来。
「もしもし」
「入来殿」
『高倉か、どうした?』
ケンケンは小声で言った。
「真子殿が連れていかれたでござる」
『・・・・は?』
⸻
数分後。
入来が合流した。
「どっち行った」
「こっちでござる」
2人は走る。
人通りの少ない道。
古い石段。
そして――
神社。
その時。
「ぎゃああああああ!!」
悲鳴。
入来とケンケンは顔を見合わせた。
「今の声!」
2人は境内の裏へと走る。
そこにあった光景は――
男が3人。
地面に倒れて、気絶している。
石田は腰を抜かしていた。
「ひっ・・・・」
真子は石段に座って、
のんびりスマホを触っている。
まるで何も起きていないかのように。
入来とケンケンは固まる。
「・・・・石本」
入来が言う。
「これはどうした」
そう言って、歩み寄ろうとしたその時。
ケンケンが入来の腕を掴んだ。
「入来殿」
「ここから先は」
「入ってはいけないでござる」
「は?」
入来は意味が分からない。
振り解いてそのまま歩く。
一歩。
その瞬間。
景色が歪んだ。
「・・・・?」
次の瞬間。
目の前に――
巨大な影。
身長は2メートルを超えている。
角。
鋭い牙。
筋肉の塊のような体。
・・・・鬼人さんだった。
入来は初めて見る鬼人さんに、
直感的に身の危険を感じる。
(こいつはヤバい)
(やらなきゃ、やられる)
そう思うと体が反射的に動く。
言葉を発することができず、
拳だけが繰り出される。
ドゴッ!!
鬼人さんのボディに入来の拳が突き刺さる。
そして、体がくの字に曲がり、
2メートルほど吹き飛んだ。
ケンケン
「うわっ」
入来はさらに踏み込む。
追撃。
その瞬間。
「せんぱーい」
真子の声。
「待った、待ったー」
入来の動きが止まる。
ゆっくり振り向く。
真子が石段から立ち上がっていた。
鬼の形相で睨む入来。
真子は言った。
「鬼人さんは味方だから安心して」
沈黙。
入来は真子の言葉が理解できなかった。
「・・・・は?」
鬼人さんはゆっくり体を起こした。
腹を押さえている。
真子は石段から降りながら言った。
「鬼人さんが助けてくれたんだ」
真子は事情を説明する。
⸻
石田の計画は真子を襲う。
霰もない姿を写真に撮る。
それを口実に脅す。
あわよくばオモチャにする。
ーーでも。
人気の無い場所を選んだが。
そこは、鬼切神社だった。
襲われそうになった時、
鬼人さんが様子を見に来る。
見える結界を張ってごたーいめーん。
ーーすると。
数人は鬼人さん見て気絶した。
石田は腰を抜かした。
ーー今に至る。
⸻
「って、わけー」
真子は飄々と語った。
入来とケンケンは、
しばらく言葉を失っていた。
そして、入来は周りを見る。
鳥居。
社。
そして鬼。
入来はため息をついた。
「・・・・石田」
「場所選びミスったな」
石田は泣きそうだった。
真子はスマホをポケットにしまう。
「まぁ」
「この場所も私が誘導したんだけどねー」
「へっ?」
石田は突拍子もない声を出す。
「いつもはあんなとこで、みおっちとりーなと別れないよ」
「あなた達が来てたの分かってたから」
「神社の近くに来たからちょっと寄ってくって別れたの」
「鬼の縄張りで悪さしたら」
鬼人さんを見る。
「こうなるよね」
鬼人さんは静かに頷いた。
その時、石田一成は思った。
石本真子には近づかない方がいい。
あと――
鬼が出る神社にも。
石田一成は31話と32話に登場しました。
どんな話だったか思い出せない方は
読み返してみてくださいね。




