[52]
「・・・・おい」
「・・・・しっかりしろ」
「みおー、みーおー・・」
遠くで声がする。
ぼやけた光。
澪はゆっくりと目を開けた。
白い照明が眩しい。
「つっ・・・・」
ぼやけた顔。
そして――
「みおっ、目覚ました!」
真子だった。
その隣には警察官が2人。
澪は横になったまま、顔だけで左右を見渡す。
知らない部屋。
ワンルームのアパート?
「えっ・・・・」
声がかすれる。
「ま・・こ・・・・?」
真子は優しく言った。
「もうすぐ救急車くるから」
その言葉を聞いた瞬間。
澪の身体から力が抜けた。
安心したのか。
そのまま再び意識が落ちた。
⸻
次に目を覚ました時。
澪は病院のベッドにいた。
病室のベッドで警察の事情聴取を受けて、全貌の話を知った。
自分はストーカーに狙われていたらしい。
2年に上がった頃から。
(ストーカーされてたなんて・・・・)
(気づかなかった・・・・)
あの日。
澪は眠らされ、男の部屋に連れ込まれた。
だが――
真子が警察に通報。
警察を連れて男のアパートへ行き。
現行犯で逮捕。
警察官は不思議そうに言っていた。
「あの子、よく場所分かったよなぁ」
澪は心の中で思う。
(だって宇宙人だもん)
(なんでも知ってるよ)
⸻
入院中。
真子が見舞いに来た。
豪華なフルーツセットを持って。
だが・・・・
持ってきた本人が食べていた・・・・
「これー、食べたかったんだー」
「メロン!うまうまっ!メロメロ〜」
意味不明なことを言いながらメロンを頬張る。
澪は黙ってそれを見ていた。
真子が視線に気づく。
そして。
急に真剣な顔になる。
「宇宙人に助けられた気分はどうかなー?」
その言葉を聞いた瞬間、澪の血の気が引く。
【ヤバい、疑ってるのがバレた】
【マズい、やられる・・・・】
言葉が出ない。
真子は数秒・・・・澪を見つめて――
吹き出した。
「ムフッ、アハハハハ」
「みーおー、んなわけ、ないじゃーん」
・・・・・・
「まぁ、この能力って宇宙人みたいなもんかー」
「わたしは、にんげんだぉ」
真子はテヘペロポーズを披露する。
澪は生きながらえたと、ホッと息を吐く。
だが。
真子は静かに続けた。
「みおの未来、見えてたんだよ・・・・」
澪は固まる。
「ストーカーに誘拐されて」
「6ヶ月監禁」
「助かるけど」
「人間不信」
「家から出られなくなる」
「復帰まで20年」
澪は言葉を失った。
真子は肩をすくめる。
「捕まえるために・・」
「わざとみおに・・尾行させた・・」
「ストーカーが来る日も」
「分かってたから」
「そして、誘い出して」
「現行犯」
「逮捕」
「・・・・ごめんね・・怖い思いさせて・・」
澪は数秒沈黙したあと、静かに尋ねる。
「まこち・・・・それ、いつ視えたの?」
真子は顎に指を当てて上を見る。
「んー?」
話出す前にメロンを一欠片フォークで刺す。
「みおと友達になった時かなー」
澪は唖然とする。
「はぁ?」
真子はメロンを口に頬張る。
「だって未来、結構長いの視えるしっ」
・・・・・・
「まぁでもさ」
真子は少し笑う
「みお、普通にしてた方が楽しいじゃん」
しばらく空気が止まる・・・・
澪は今までの会話を消化したのか、
突然笑い出した。
「はははは!」
「まこち・・・・」
涙が流れ出るのを指で拭いながら
「やっぱ宇宙人だよ」
真子も笑う。
病室に笑い声が響く。
⸻
澪は思った。
宇宙人かもしれない。
でも――
きっと。
世界で一番頼れる宇宙人だ。




