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放課後になると、廊下は部活へ向かう生徒たちでざわついていた。
その人混みの中を、真子はいつも通りフラフラと歩いている。
自由。
気まぐれ。
予測不能。
澪は少し距離を空けて、その背中を見ていた。
(やっぱりおかしい)
(普通じゃない)
この数ヶ月で澪は何度も思った。
未来が見えている。
人の悩みを言い当てる。
危険を回避する。
偶然で説明するには、出来すぎている。
(宇宙人なんじゃないの?)
澪は真剣だった。
もし宇宙人なら。
もし正体があるなら。
それを暴きたい。
澪は今日、放課後に真子を尾行していた。
⸻
真子は校門を出ると、まっすぐ帰る気配はない。
コンビニに入る。
肉まんとパックジュースを買っている。
食べる。
キョロキョロしながら歩く。
途中で猫と遭遇した。
そして、パックジュースのストローで猫と遊んでいる。何か話しかけているが、遠目で聞こえない。
(宇宙語か・・・・)
猫とさよならをしてしばらく、
自販機の前で立ち止まり、5分くらい悩んでいる。
そしてジュースを買う。
屈んでジュースを取る際に何かに気づいたようだ。
落ちていた何かを拾って周りをキョロキョロ見渡す。
そして何食わぬ顔をしてそれをポッケに入れている。
そして、ご機嫌にふわふわと歩き出す。
(・・・・なにしてんのあいつ)
澪は物陰に隠れながら尾行を続ける。
だが、真子はまるで気づいていないように見える。
やがて空は暗くなり始めた。
街灯がポツポツと灯る。
それでも真子は家に帰らない。
ただ、フラフラ歩き続けている。
そして――
澪は気づいた。
(あれ? ここ・・・・私の家の近くじゃん)
住宅街。
人通りは少ない。
真子はそのまま細い路地へと入っていった。
角を曲がる。
澪も慌てて後を追う。
角を曲がる。
――いない。
真子の姿が消えていた。
澪は立ち止まる。
「・・・・えっ?」
辺りを見渡す。
電柱。
塀。
住宅。
誰もいない。
(あれっ? どこ行ったの・・・・?)
その瞬間。
後ろから腕が回された。
「っ!!」
口を手で押さえつけられる。
澪の身体が凍りつく。
「みーおちゃん・・・・」
気持ち悪い声。
耳元で囁かれる。
「こんな遅くまでー、なーにしてるのかなぁ?」
男の声に澪の心臓が爆発しそうになる。
(なに?)
(ヤバい・・)
(誰か・・助けて・・・・)
逃げようともがく。
だが、身体はびくとも動かない。
「悪い子はさぁ・・・・」
声が笑っている。
「調教しないといけないよねぇ」
布が口元に当てられる。
甘い匂い。
意識が揺れる。
(あっ・・・・)
視界が滲む。
(私・・・・ヤバ・・・・い・・)
世界が、暗く沈んでいった。




