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人生をやり直しますか? 〜YES or NO〜 【みんなの心の中が読み取れる少女は、やり直し高校生活でやりたい放題です】  作者: 相賜 奏合


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51/57

[50]

ファンファーレが鳴る。


乾いた金管の音が空を裂く。


ざわめきが、一瞬、波のように揺れた。


ゲート前。


馬たちがゲートの中に収まっていく。


真子は動かない。


目を閉じている。


莉英奈は両手を強く握りしめている。

入来は腕を組み、掲示板とゲートを交互に見ている。

真弓は無言で馬券を額に当てながら祈っている。


――静寂。


カシャン、とゲートの金属音。


スタート。


土煙が舞い上がる。


「出遅れた!」


誰かの叫び。


真子の睫毛がわずかに震える。


2番は中団。

9番は後ろ寄り。


先頭は別の馬。


実況が早口で流れていく。


「第3コーナーへ!」


莉英奈の呼吸が荒い。


「まこち・・・・」


返事はない。


真子の額に汗がにじむ。


(見ない)


(今は、見ない)


未来はもう覗いた。


あとは・・・・


世界がその通りに進むかどうか。


最終コーナー。


外から9番が伸びる。


観客がどよめく。

「おいっ、9番、足がいいぞっ!」


2番が内を突く。


狭い。


前が詰まる。


入来の目が鋭くなる。

「抜けろっ」


真弓は小さく呟く。

「お願い」


真子の瞳が開いた。

・・・・いけーーっ


叫んではいない。


ただ、そう念じた。


直線。


歓声が爆発する。


9番が外から伸びる。


一気に先頭へ。


「9番抜けた!!」

「まぢかよー」


観客の声が波のように押し寄せる。


莉英奈の顔が強張る。


「・・・・え?」


2番はなんとか狭い隙間を縫って半馬身後ろにつけて必死に追う。


しかし――


差が詰まらない。


「あっ、逆だっ」

「ダメーーっ!見てらんなーい」


「イケーーーっ!」

「・・・・・・・・」


9番がさらに加速していく。

2番を突き放す。


残り100。


9番、先頭。

2番、まだ食らいつく。

しかし、差は縮まらない。


残り50。


ハズレを確信した観客たちが、馬券を空高く投げ捨て、桜吹雪のように舞い上がる。


罵声が飛ぶ。


頭を抱えて空を見上げる。


その中で。


真弓だけは、両手で馬券をまっすぐ持ったまま、

結末を見届けている。


祈るでもなく。


笑うでもなく。


ただーー


目を逸らさない。


そして・・・・


ゴーーール



静寂。


一瞬、世界の音が消えた。


莉英奈の手から力が抜ける。


「・・・・終わった・・・・」

膝が震える。


「・・・・まこち・・」

「2番・・あと・・少しだったのに・・・・」


その時。


真子が小さく呟いた。


「・・・・なに言ってんの?」


莉英奈が顔を上げる。


真子の視線は掲示板。


一点だけを見ている。


電光掲示板。


ゆっくりと点灯。


1着 9番

2着 2番


莉英奈の顔が真っ青になる。

「・・・・逆だったよ・・・・」


入来も小さく息を吐く。


「外れか・・・・」


沈黙。


・・・・


次の瞬間。


掲示板の下。


新しい文字が点灯。


馬連 2-9 10080円


莉英奈:

「・・・・えっ?」


真弓:

「・・・・フフッ」


入来:

「・・・・そういうことか」


真子が小さく笑った。

「馬連は、順番・・・・関係ないって」


世界が一気に音を取り戻す。


大歓声。


万馬券に誰もが叫び、唸る。


「うわあああああ!」

「ええーーーーっ!」


莉英奈がペタリと座り込む。

「・・・・うそ・・・・」


真弓が静かに息を吐く。


入来が小さく笑う。

「・・・・やったな」


真子は、笑わなかった。


ただ、胸の奥が重い。


(ハンチング帽のおじさん)


どこかで、別の未来が消えた。


土の匂いが、やけに濃い。


風が吹く。


掲示板には、確定の文字。


払い戻し表示。


100倍、万馬券だ。


50万が5000万


世界の歯車が変わる。


真子は大きく息を吐き、ゆっくりと呟く。


「もう・・やんない・・・・」


その目は、少しだけ潤んでいた。


冬の空は、澄み切っているが、真子には滲んだ空が広がっていた。

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