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ざわめき。
土と芝生の匂い。
歓声。
場違いなほど冷静な空気で歩く。
真弓は歩きなが確認する。
「・・・・本気なの?」
「うん」
真子は頷く。
「これはギャンブルというより・・」
「・・投資」
真弓が目を細める。
「根拠は?」
真子は笑った。
「未来」
真弓は数秒黙ったあと、小さく息を吐いた。
「・・・・いいわ」
「私も投資してあげる」
「りえなちゃん、持ち金は?」
「20万です・・・・」
真弓は少し考えて決心を固めた。
「よしっ、じゃあぁ、私は30万」
「合計で50万よ」
莉英奈が慌てる。
「え!?そんな・・・・!」
「これは私の問題で・・・・」
「少しでもまこちゃんの負担を軽くしてあげたいからね・・・・」
その言葉を聞いて真子はニヤッとする。
「さすが、真弓さん、分かってました?」
真弓は溜息をつく
「あなた、何回当てて目標に届かそうと思ってたの?」
「できるなら、この金額で1回勝負にしなさい」
「分かったよ、真弓さん・・・・」
入来がニヤッと笑う。
「肝座ってんな、あんた」
⸻
莉英奈と入来は競馬新聞と睨めっこをしていた。
「こんなにいっぱいレースあって、馬もいっぱい・・・・」
「どうやっても当たる気がしないよ・・・・」
莉英奈は俯き、重く、愚痴る。
真子は新聞を見ずにキョロキョロと周りを見渡していた。
(馬の気持ちなんて読めるハズがない)
(レースの未来なんて視ることはできない)
(そしたら、当たった人の未来を覗いていくしかない・・・・)
それは観客何万人の中から探り当てるという莫大な作業、一人一人の未来を見ながら、高額当選者を探し出すという限界チャレンジだった。
その間にもレースは進んでいく。
莉英奈は焦りの色を見せる。
「まこち・・・・レースあと半分だよ」
「大丈夫?」
真子はずっと周りを見渡したままだ。
莉英奈は真子に何かを言いかけた時、真弓がそっと莉英奈の肩に手を起き人差し指を立てて口につける。
しばらくして真子の顔つきが変わった。
1人のハンチング帽を被ったおじさんに目が行く。
線を辿っていく
深く、サーバーの中
大量の情報が流れている世界
//////
馬券を換金している
・・・・8レース
馬連・・・・
・・・・2ー9
1000円・・・・
・・・・換金額は
15万・・・・
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(ということは・・・・オッズ150倍)
真子は競馬新聞を指差す。
「これ・・・・」
「馬連で2ー9」
真弓が競馬新聞を見て眉を上げる。
「・・・・オッズ、150倍・・・・
「えぐいわね・・・・」
莉英奈と入来も息を呑む。
ーーー
購入窓口で真弓は馬券を購入している。
3人は後ろでその姿を見守っていた。
真弓が少し疲れた顔をしながら、馬券を持って歩み寄ってくる。
「ふぅーーっ」
「係員の目が痛かったわね・・・・」
莉英奈は申し訳なさそうに口を開く。
「真弓さん・・・・ごめんなさい・・・・」
「大丈夫よ・・それより・・」
「まこちゃん、オッズ動くわよ」
真弓はオッズ掲示板に目をやる。
「うん、100倍まで落ちる・・・・」
数秒後:
電光掲示板更新。
入来は掲示板のオッズを見て目を見開く。
「・・・・本当に落ちたな」
周囲がざわつく。
「おい、今、2ー9のオッズめちゃ落ちたぞ」
「誰かデカいの入れたな・・・・」
「イヤ、2ー9は、ねぇよ」
「ドブに捨てたもんだな・・・・」
莉英奈はキョロキョロして不安な顔をしている。
真子はそんな莉英奈に声をかける。
「りえな・・大丈夫だから・・信じて・・」
「ただ・・・・」
入来がツッコむ
「ただ・・・・なんだ?」
「ううん、なんでもない」
真子は首を横に振る。
口にできなかった。
(ハンチング帽のおじさん・・ごめんなさい)
(未来を見ただけじゃない)
(私が・・・・未来を変えた)
胸の奥が、少しだけ冷えた。
15万勝ち取るハズが、私たちのせいで10万になる。
5万少なくなる・・・・
それで、その人の人生が変わるかもしれない
そう思うと胸が痛む
しかし、これは私の業だ・・友達を巻き込んではいけない・・・・
真子は強く念じた。




