[47]
お店も閉店し、真子は片付けを終えて、裏口から出る。
「ふぃーーっ、今日もおつかれちゃん」
そう言って前を見ると莉英奈がやって来た。
「おーーっ、りえなー、どうしたー?」
「あっ、まこち、おつかれ」
「うん、ちょっと・・オーナーに呼ばれて・・」
莉英奈は少しバツが悪そうにしているが、真子は気にしなかった。
「そっかー、んじゃ、おつかれぃ」
手をヒラヒラさせてすれ違う。
真子は背中で莉英奈が店に入っていく姿を見て立ち止まる。
「さてとっ・・・・」
真子は鼻歌を歌いながら、再び歩きだした。
ーーーーーー
ーーガチャ
喫茶店の裏口が開く。
オーナーと莉英奈が出てくる。
オーナーは軽い足取りで車のキーをクルクルと回している。
対照的に莉英奈の足取りは重く、俯き、緊張が伝わってくる。
そして、オーナーの車に2人が乗り込もうとした時。
「りえなー、待ちなー」
オーナーと莉英奈は立ち止まり、声のする方へ顔を向ける。
そこにはパックジュースを片手に真子が立っていた。
「えっ? まこち、帰ったんじゃないの?」
真子はチューっとジュースを一口
「友達の危機にほっといて帰るわけないじゃん」
「えっ?危機?わたし?」
「りえな、あんた、その車に乗ったら売られちゃうよ」
莉英奈は何も言えずに固まる。
真子はパックジュースをフリフリして残留を確認しながら続ける。
「視えちゃったんだよねー」
「りえなが風俗に売られて、抜け出せずに苦労する、み・ら・い・・・・」
真子が言う未来に確証はないが、信憑性の高い真子の占いだ。
ゾッとする莉英奈。
莉英奈が黙ったまま固まっていると、オーナーが不機嫌な顔をして真子に歩み寄ってくる。
「いーしーもーとー、お前はとことん俺を邪魔してくれるよなぁー」
威嚇の声にも真子は平然だ。
「あんた、人としてセンスねーな」
「赤ん坊からやり直してセンス磨いたら?」
真子の煽りにオーナーはキレた。
「おまえっ、ぶっころす」
拳が振り上がり、風を切り裂きながら、真子に向かってくる。
・・・・
パシッ。
音。
拳は途中で止まった。
誰かの手で・・・・
しかも・・片手で・・・・
入来だ
「正当防衛だな」
低い声。
次の瞬間。
オーナーは地面に転がって気を失っていた。
「はい、お疲れしたぁーー」
真子はパックジュースを飲みながらオーナーに歩み寄り、座り込む。
「では、私と、りえなは、今日でお店、辞めまーーす」
「ねっ」
真子は莉英奈を笑顔で見る。
莉英奈は何も言えないが頷いた。
⸻
近くの公園で、真子と莉英奈はブランコに座っている。入来は境界柵に腰掛けている。
莉英奈は静かに、だが、不満気に口を開く。
「なんで助けたの?・・これ、私の問題じゃん・・・・」
「んーー?」
「さっきも言ったじゃん」
「友達が危機な目に合うの分かってて、ほっとけるわけないじゃーん」
真子は空を見上げながら軽〜く答える。
「バカみたい・・・・」
莉英奈は俯き影を落とす。
沈黙。
しばらくすると、莉英奈は震えていた。
「・・・・私の家・・・・」
「借金、あるんだよね・・・・」
ぽつり。
「3000万」
真子は何も言わない。
ただ聞いている。
⸻
父が借金を作った。
しかも、父は逃げていない。
代わりに母が働き、返していく。
2000万まで減ったところで倒れた。
母は今、入院中。
私が代わりに借金を返す。
そのして今、私の貯金は20万。
とにかく、お金が必要だ。
⸻
俯いている莉英奈。
沈黙。
冬の風が冷たい。
真子はなにか、決心した顔をする。
「・・・・ねぇ、りえな・・・・」
真子が空を見上げている。
「ちょっと賭けしてみない?」
一瞬、強い風が吹き付ける。
莉英奈が顔を上げる。
「・・・・え?」
真子は笑った。
いつもの、少し悪そうな笑顔。
「今回だけ・・・・」
「未来・・・・使ってみるよ・・・・」
真子がブランコを漕ぎ出し、勢いに乗ってジャンプして飛び降りる。
Tマークが決まる。
「・・・・うん、10点満点」
満足そうに頷くと、くるりと振り返り莉英奈を見る。
「はいっ!・・ということでぇーー」
「競馬にーー、いっきまーーーーすぅ」
沈黙。
莉英奈
「は?」
入来
「・・・・は?」
冬の風はやはり、冷たい・・・・




