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授業の合間の休み時間。
真子と男子生徒の声が響く
「やだよーー」
「なっ、頼む、1回、1回だけ、やらせてくれ」
「しつこいっ、やだって」
「金は出すっ、だから頼む」
何やら卑しい会話が響き、教室中の視線を集める。
【おいおい、隣の組の山田じゃね?】
【大声で卑猥な奴だな】
【こんな昼間っから関係迫るなよ】
真子は周りを見渡し視線が集まっているのに気づく。
「ほらー、あんたが変なこと言うからみんな勘違いしてる目で見てるじゃない」
「もぅ、そんなのしないから、早く自分の教室に戻って」
山田は残念な顔をして、スゴスゴと教室を出て行った。
溜息をついて項垂れている真子に莉英奈が声を掛ける。
「まこーぉ?白昼堂々と身体を売る話してー」
「ハレンチ娘だなー」
イヤらしい目つきで真子を見る。
真子は再び溜息をついて、口を開く。
「りえなまで・・違うって、ギャンブルの話だよ・・・・」
「えっ?ギャンブル?」
莉英奈は素っ頓狂な顔をする。
「なんかさ、競馬で当たりを占って一攫千金しようぜって言ってきたの」
「あーーぁ、だからあんな会話になったのね」
少し残念そうな顔をしている。
「でもさ、まこち、何が当たるかとか、わかるんじゃない?」
その問いに、真子は少し黙った。
笑顔が、ほんの少しだけ消える。
「・・・・やったことないから、わからないよ」
小さく続ける。
「ていうかさ・・・・」
「私、ギャンブルって大っ嫌いなんだよね」
「身を滅ぼす人、いっぱい見てきたから」
空気が少しだけ重くなる。
莉英奈は何も言わず、窓の外を見る。
風がカーテンを揺らしていた。
ーーーー
放課後。
教室の窓から差し込む光は、もう冬の色に近かった。
莉英奈はいつも通り笑っていた。
けれど。
真子には、その笑顔の奥に薄く走る疲労と別の何かが見えていた。
「ねぇ、りえなー」
「最近、バイト増やした?」
莉英奈は一瞬だけ固まった。
「えっ?・・・・なんで?」
「かーおっ」
短く答えて真子は軽く肩を竦める。
「なんのバイト始めたの?」
真子の問いに莉英奈は顔を触りながら答える。
「喫茶店」
真子は喫茶店という響きに興味を持つ。
「きっさ・・てん・・?」
バッと身を乗り出す。
「私も働ぎたいっ」
莉英奈は驚いた顔をする。
「えっ?まこち・・お金に困ってたっけ?」
「困ってないけど、喫茶店で働いてみたいの」
真子が憧れの顔をしているのを、莉英奈は少し冷めた目をして見る。
「お金に困ってない人は悠長でいいわね・・・・」
「まぁ、いいわ、オーナーに聞いてあげる」
「りえなーっ、サンキュー、私、出来る女だから」
親指を立てる真子を、莉英奈は引きつった顔で見る。
「自分で言うなしっ」
その後、莉英奈が悲しい顔をしているのを真子は見逃すハズがなかった。




