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人生をやり直しますか? 〜YES or NO〜 【みんなの心の中が読み取れる少女は、やり直し高校生活でやりたい放題です】  作者: 相賜 奏合


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放課後。


西岡高校の廊下は、夕陽の色に染まり始めていた。


真子はケンケンと由美と並んで歩いている。


今日も何人もの相談を終えたばかりで、どこか気の抜けた空気だった。


「・・・・お腹すいたー」


「さっきお菓子食べてたでござろう」


「それは別腹なのだよ」


そんなやり取りをしていると――


「まこちーっ!」


後ろから足音。


振り返ると、理絵が息を切らして追いかけてきた。


「ちょっと・・・・相談、いい?」


真子は一瞬だけ表情を変えた。


「・・・・いいよー」



駅前のファミレス


窓際の席。


ドリンクバーのグラスがカランと音を立てた。


「それで?相談ってなに?」

真子の問いに、

理絵は少し言葉を選ぶように視線を落とした。


「・・・・私の幼馴染の話なんだけど」


「めちゃくちゃ明るくて、誰とでも仲良くなる奴だった・・・・けど・・・・」


声が少し震える。


「1年の2学期から、急に真逆の性格に・・変わっちゃって・・」


「笑わないし、誰とも話さないし・・・・」


「夏休みになにがあったか聞いても、何も言わないの・・」


沈黙。


真子は腕を組んで俯き唸っている。

「うーん・・・・」


【まこ殿でも分からないことがあるのでござるか?】

ケンケンがメガネをクイクイする。


「・・・・キツネの仕業とかの線はないでござるか?」


「うーーん・・・・」


「・・・・なにか憑いてるとか・・・・?」


理絵が不安そうに真子を見る。


「うーーーん・・・・」


真子は腕を組んだまま、難しい顔をしていた。


しばらくして。


「・・・・りえっち」


「正直に言うね」


真子はゆっくり口を開く。


「わたし・・その人にさー・・・・」

「会いたくないんだよねー」


「え?」


「でも、りえっちのお願いだから」


「今回は特別」


ケンケンと由美は顔を見合わせる。

なぜ嫌がるのか分からない。


真子は続ける。

「その子、今からココに呼んでくれない?」

「まだ学校にいるからさ」


理絵が驚く。


「えっ!?なんで分かるの!?」


真子はムフフと笑うだけだった。



数分後


店の入口のベルが鳴る。


入ってきたのは――


暗い空気をまとって歩いてくる。


「・・・・え?」


由美が思わず声を漏らした。


「男子なの?」


理絵が紹介する。


「2年7組の西祥平くん」


西は目も合わせず、軽く頭を下げただけだった。


真子は頬杖をついたまま見つめる。


冷たい目。


しばらく沈黙している。


由美が小声で。

「ケンケン、なんか視える?」


ケンケンは首を横に振る。

「・・・・何も・・・・」


そんなヒソヒソ話をしている時に

真子がいきなり口を開いた。


「ねぇ、ニッシー」

「なんで、まこっちゃんの助けになってあげなかったの?」


空気が凍る。


西の肩がビクンと震えた。

「・・・・くっ」


理絵たちは意味が分からず固まる。


西は俯いたまま、答える。


「あんな状況で・・・・助けたら・・・・俺も巻き添え食らう・・・・」


暗く、沈んだ声。


真子は続ける。


「でも、まことは吉田晴美を助けようとしたよね?」


「もし数人でも動いてたら・・・・結果が違ったかもね」


西の顔が歪む。


沈黙。


由美の脳裏に、真子が言っていた「1年8組」の話がよぎる。


【まこち・・・・だから会いたくなかったんだ】


真子は由美をちらっと見て、人差し指を口に当てた。


西が顔を上げる。


「・・・・マコッちゃん・・・・学校辞めて・・・・どうしてるんだ・・・・?」


「生きてるのか・・・・?」


真子は小さくため息をついた。


「生きてるよ」


「元気ではなかったけどね」


西は一瞬、ホッとした顔をした。


次の瞬間、テーブルに身を乗り出す。


「会わせてくれ!」


真子以外の3人は西の声と動きにビクッと反応する。


「西くんさー」


真子は淡々と返す。

「会って、なんて言うの?」


西はソファに腰を沈め直す。

「・・・・無視して・・悪かったって・・・・」


真子の溜息は深まる。


「あのさー、その時助けなくて、結果、人が1人亡くなってるんだよ?」

「あとになって、『悪かった』って言われて、本人は『そうですか』ってなるわけないじゃん」


「じゃあ、どうしろっていうんだよ!」

西の口調が強くなる。


真子は真実の顔を思い出した瞬間、感情が湧き上がり口調が強くなったと気持ちを抑える。


真子の目が少しだけ細くなり、冷静に話しだす。


「それさ・・・・」

「ただ、自分がスッキリしたいだけだよね」


西が言葉を失う。


「それってさ」

「また、まことに重荷を背負わせるってことなんだよ」


「無視をしたあの時となんら変わりがないのよ」


「この件は、あなたも含め、あの時の8組生徒全員が背負って生きなければならない」


「でもそれは、暗く生きろってことじゃない」


沈黙。


重い沈黙。


真子は静かに言った。


「償うってのは、謝ることじゃない」


「助けなかったことは消えない」


「だからさ・・・・」


「吉田晴美が生きられなかった分まで、精一杯生きることだと思う」


誰も言葉を返せなかった。


夕陽がテーブルを赤く染めていた。


ーーーー


ファミレスを出て帰る途中、真子は西を呼び止める。


そして、優しく語りだす。


「ねぇ、西くん」


「今はさ、まだ会わない方がいいと思う」


「・・・・でもね」


冷たい風が空へと吹き上がる。


「未来ってさ、変わるんだよ」

真子は少しだけ視線を落とした。


「後悔ってさ・・・・」


「消えないんだよね・・・・」


「でも、どこかで・・・・」


真子は顔を上げて西を見る。


「やり直せるタイミングって、ちゃんとあるんだと思う」


「だから・・・・」


「まことが笑えるようになった時」


「その時にもう一回、友達になりなよ」


西は何か言おうとする。


しかし、何も言わず、小さく頷くだけだった。

そして、踵を返して理絵と歩き出した。


真子、ケンケン、由美は2人の背中を見送っていた。


真子は小さく溜息をつく。

「もう、8組の子たちの話は聞かないっ」


ケンケンと由美はクスリと笑う。

吐いた息が、うっすら白くなる。


季節は静かに変わり始めていた。


冬は、すぐそこだ。

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