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人生をやり直しますか? 〜YES or NO〜 【みんなの心の中が読み取れる少女は、やり直し高校生活でやりたい放題です】  作者: 相賜 奏合


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[40]

後日・・・・


冴子の家の前。

住宅街の静かな通りに、1台の車が停まっていた。


玄関から出てきた冴子は、両親に挟まれるように歩いている。


少し痩せた身体。


けれど、あの日よりも顔色はわずかに柔らいでいた。


車のドアに手をかけた瞬間。


冴子の視線がふと横へ向く。


――真子。


少し離れた場所で、壁にもたれながら見送っていた。


目が合う。


冴子は、小さく頭を下げた。

言葉はない。

でも、それで十分だった。


真子も軽く手を振る。


車のドアが閉まる。

静かなエンジン音で、車はゆっくりと動き出す。


車が見えなくなるまで、真子は立ち尽くして見送っていた。


・・・・


スーッと風が抜けていく。


「・・・・さてさてー、帰ろっかなー」


歩き出した時。

背後から声がかかった。


「・・・・さえこ、行ったか」


真子は振り返ると、そこには入来が電柱にもたれ、腕を組んで立っていた。


「うん。病院だって・・・・」

短い返事。


少しだけ沈黙が落ちる。


「・・今回は、色々世話になったな・・・・」

低い声。


でも、どこか素直だった。

真子はニコリと笑う。


「いいよー。その代わり、私がピンチの時は守ってねん」


軽い口調。

冗談みたいに。


入来は一瞬だけ目を細める。

「・・・・わかった」


静かに応じた。



――あの日ーー


梶田を冴子の家へ連れて行き、両親の前で全てを話させた。


謝罪。


弁解。


崩れる言葉。


両親は激怒し、家庭教師運営会社へ抗議。


会社は「個人の問題」と切り捨て、梶田を解雇。

慰謝料は本人に請求するよう通告した。


両親は八ツ橋大学にも連絡し抗議。

しかし大学側は当初、無関心だった。


だが。


SNSで話題が拡散。


炎上。


批判。


抗議。


事態は予想以上に大きくなり、遂には学長の謝罪会見まで開かれる事態へ発展した。


梶田は家族共々、世間からの非難を浴び、自宅も特定され――

やがて、家族ごと姿を消した。


冴子に残った心と身体の傷は消えない。


それでも。


少なくとも、終わった。


一区切りはついた。


・・・・・・


入来は悔しそうな顔で、真子を睨む。


「・・・・なぁ」


「んー?」


「俺・・・・一発くらい殴っといた方がよかったんじゃねぇかって、ちょっと思ってた」


真子は小さく溜息をつく。

「せんぱーい、それやったら全部台無しだったよー」


入来は鼻で笑った。

「・・・・だよな」


少しだけ、肩の力が抜けていた。


「おまえ、すげーな。どこまで視えてんだ?」


「それは前にも言ったけどー」


真子は人差し指を立てて口に当てる。


「そこわー、企業秘密なのですぅー」


入来は笑った。

「食えねー奴だな」


「実は食べると美味しいかもよー?」

真子は微笑みながら反論する。


「そんなおっかねーもん、食いたかねーよ」

そう言って踵を返す。


右手を軽く上げる。

「なんかあったら呼べ。いつでも行ってやんよ」


背中が遠ざかる。


頼れる背中。


真子はその姿を見送りながら、少しだけ嬉しそうに笑った。


入来の背中が角を曲がり、見えなくなるまで、真子は見送った。


そして、真子はググッと伸びをして、空を見上げる。


誰かが守られた代わりに、誰かの未来も軌道修正される・・・・


それでいい・・それでもいいのだ・・・・。


「さーて、たこ焼きでも食べて帰るかなー・・・・いや、今日はパスタの気分なのだー」


ゆっくりと歩き出す。


誰かの未来が、大きく変わった午後だった。

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