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人生をやり直しますか? 〜YES or NO〜 【みんなの心の中が読み取れる少女は、やり直し高校生活でやりたい放題です】  作者: 相賜 奏合


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20/56

[20]

街に降りると、空気が変わった。


山の静けさとは真逆。


人の気配、足音、雑踏のざわめき。


匂いすら多すぎて、真実は無意識に眉を寄せた。


「・・・・まこ、なんか今日、多くない?」


「多いね。夏休みだから仕方ないよ」


真子は軽く答えるが、視線は真実から外さない。


歩き出して数分。


真実の呼吸が浅くなっていくのが分かった。


【うわ、あの人の服ださ…】

【今日の会議、最悪だな…】

【お腹すいた…】


雑多な心の声が、無差別に流れ込む。


真実の足が少しよろけた。


「・・・・来てる?」


「・・・・ああ、重い・・・・」


真子は頷く。

「じゃあ、やってみよ。説明したやつ」


「線の分別?」


「そう。それ」


真実は立ち止まり、目を閉じ、意識を内側へ向ける。


接続。


大量のチャンネル。


雑音の海。


(くっ・・・・多すぎるっ)


頭の奥でざわめきが膨れ上がる。


意識の中に、無数の線が広がる。


とりあえず、全部を押し返そうとした。


真子の眉がぴくりと動いた。

「あっ・・・・」


――ぶつん。


一瞬、静寂。


次の瞬間。


【最悪…】

【時間ない…】

【なんで俺ばっかり…】


さっきより強い波がドバーーっと押し寄せる。


「・・・・いっ!」

真実の顔色が一気に悪くなる。


「違う!違うよ、全部押し切ろうとしちゃダメ!」

真子が横から声をかける。


「聞きたいのだけ残すの!」


「わかってる・・でも、そんなの・・・・」


人の声。


足音。


心の声。


全部が混ざり、境界が消えていく。


真実の頭はフリーズ状態に入る。


視界がグニャっと歪んだ。


「・・・・ちょっと座ろっか」

真子が短く言う。


真実はその場にしゃがみ込み、膝に手をついた。


呼吸が荒い。


「・・・・ダメだ・・・・多すぎる・・・・」


「うん、ダメだね」

真子はあっさり言う。


責める響きはない。


ただ事実。


真実は苦笑した。


「・・・・難しいな」


「そりゃそうでしょ。私は2年以上かかってるんだから」


真子は近くの自販機から水を買って渡す。


「ほら、飲む?」

「それとも私が口移しでーー」

「・・・・俺、向いてないのかな」

真子の言葉を遮り、真実は水を受け取る。


「は? なにそれ」

真子が不満顔のまま即座に返す。


「まだ始まってもないのに諦めるの早いよ」


「・・・・でも」


「今は“失敗の仕方”を覚えてる段階」


真子は人混みを眺めながら言う。


「全部聞こうとするから潰れるの」


「・・・・」


真子は視線を真実に戻す。

「・・・・選べないなら、今は潰れてOK」


あっさりした、でも優しい言葉に、

真実は少し笑った。


「・・・・優しいのか厳しいのか分からんな」


「両方だよ」

真子はニヤッと笑う。


しばらく沈黙。


人の流れが横を通り過ぎていく。


真実の呼吸が、ゆっくり戻ってきた。


「・・・・もう一回、やる?」


「・・・・休んでからな」


「了解」


真子は空を見上げた。


(・・・・まだ全然だな)


でも、それでいい。


最初は、ここからなんだから。

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