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その43 奇跡の聖女
その43
ひと月後。
王都の大神殿で、事務を預かる書記神官が、首を傾げます。
「何だ、この『神の奇跡』認定嘆願書の多さは」
王都のあちこちで、そして近隣の町からも。
小さな不思議な出来事が、報告されて来たのです。
「居間の腰板の鹿の彫刻が、逆を向いてしまった」
「机の脚元に彫ってある、うずくまるかわうそが、立ち上がっている」
「大扉の馬の彫刻が、足をあげた姿になった」
「子供の揺り木馬が、揺れて窓辺に移動していた」
「鏡台に彫られた小鳥が、翼を広げて別の枝に移っている」
「箪笥に彫られた花の蕾が、満開になった」
ひとつずつなら、勘違いで済みそうな小さなことが、
同じ日、同じ時刻に、これだけ多く報告されて来ていたのです。
その全部が、同じ職人の手になるものらしく。
そして、顔のついた彫刻は、皆、北の方を向いているといいます。
「北で何か、変事の報告が来ていないか?」
「トラウトス男爵領で、ゴブリンの『湧き』があったという知らせくらいです」
王都から北にある、ダリアの近くの、シトリンという小さな町で。
「その町の位置と事件の日時を確認してくれ」




