その42
その42
「シトリンの町を救った小さな聖女像」を皆は喜び讃えました。
「奇跡の聖女様」を見に人々は下町を訪れ、えらい代官様までやってきました。
お金持ちがたくさんお布施をおいていったので、それを使って、
ゴブリンに小屋やテントを壊された貧民たちもなんとか冬を越すことが出来ました。
テオたち三人は、町を救った小さな英雄となり、
「おれっちの聖女様」は何をお喜びになるか。と相談した冒険者たちは、
雌山羊を一頭買って、献上してくれました。
久しぶりにたっぷりミルクを飲めて、猫たちはご機嫌です。
「私は聖女様に救われた」
と、ある商人が言いだしました。
数年前、ひどい火傷で命も危なかった時、
小さな子供の声が
「ねぇ、おきてください」と、ささやいたのだそうです。
わたしには覚えがないので、新しいちいさなお店の宣伝だったのかもしれません。
冒険者ギルドでは、過去の統計から、
「この町の冒険者は重傷者や死者が少ない」
と、発表しました。
「そりゃあ、おれっちには聖女様の御加護があるからさ」
と、冒険者たちは胸を張ります。
「わしがちいさな子供だった頃。
この町に、ジンゴロさんと言う腕のいい家具職人がおっての」
大家さんのおばあさんが、広場に子供たちを集めて、おとうさんの話をしてくれています。
荒れていた街道も整い、遠くから来た商人が
「勇者様たちが魔王を倒した」
といううれしい知らせを運んできました。
これで、凶作の続いた年も終わり、豊かな実りが戻ってくるのでしょうか。
わたしに集まった小さな光は、少しずつ薄れて、消えていきます。
いつものように、広場を見守る毎日が戻ってきました。
山の手のきれいな家の一室で、女の子が首を傾げています。
「おかあさん、私の机についてるおすわりしたワンちゃんの彫刻が、立ち上がっているわ」




