その38
その38
矢が射かけられ、火玉と礫玉が投げつけられますが、ゴブリンの数は減ったようにも見えません。
一晩中、塀の向こうから、ゴブリンの叫び声が聞こえます・
みな不安で眠れぬ夜が明けました。
明け方、薄暗いうちから、エリアさんがわたしの前で祈っています。
河のほうが騒がしくなり、気が付いた人たちが集まります。
凍てつくような冷たい水を跳ね上げて、誰かが土手を這い上がってきます。
『テオ!』
テオと、二人の仲間たちです!
まるで出会った時のように、ずぶぬれでガタガタ震えるテオたちが、助け上げる手につかまって、叫びました。
「ギルドに!ギルドマスターに知らせをっ!」
「ゴブリンたちが排水抗を登ってきますっ!」
春の雪解け水で河が増水した時、町の外の枯れ沢に水が流れるように、排水抗が作られています。
今は一番水量が少ない時で、取り入れ口は水面より上に出ています。
取り入れ口にも排水口にも、鉄格子が嵌められていて、何も入れないようになっていたのですが。
「どっちも鉄棒が錆びて、鉄格子が崩れちまってる」
「俺たちが通れるくらい穴が開いてた!」
ゴブリンを避けて逃げ込んだ坑道が排水抗だと気付いて、そこから上がって戻ったというのです。
「出来るだけ石で塞いで来たけど、見つけたら入って来るよ!」
「取り入れ口はどこだ」
「壁側の、上流だよ」
「俺が場所を知ってる。行くぞ!」
大人たちが橋を渡って走っていきます。
駆け寄ったエリアさんが、いきなりパシンとテオをひっぱたきました。
「もう、この子はっ!どれだけ心配したか!
取り入れ口がふさがってたらどうするつもりだったんだいっ!」
登って来て出口の格子がふさがってたら・・・
ちょっとぞっとしました。
しかし大人たちがたどり着く前に、川向うのテントのあたりから悲鳴が上がります。
「キャーッ!」
「ゴブリンだーっ!」




