その33
その33
ニャウッ!
ニャーッ!
誰かが猫に石を投げました。
猫たちはあわてて集まって、わたしの陰に逃げ込みます。
『うちの子をいじめるのはだれっ!』
追いかけて来た冒険者風の男をにらみつけ・・・ることは出来ないので、マントの端でパン、とひっぱたきます。
くらっとした男はびっくりして膝をつき、それでも猫たちを狙おうとします。
「お前!何をやってるんだ!」
気付いたテオが走ってきました。
「へっ、野良猫の一匹ぐらいいいじゃねぇか」
「いいものか!その猫たちは聖女様のものだ!」
「うるせぇガキだな、こちとら腹が減ってんだ!
ゴブリン狩りでへましちまって、まだ傷が治らねぇ。
猫鍋でも喰って力をつけなけりゃ・・・いてっ!」
男が投げた石をテオが投げ返します。
「馬鹿野郎!
冒険者なら外で一角うさぎでも大爪モグラでも狩ってこい!
聖女様の猫に手を出すな!」
「このクソガキっ!」
街中で武器を抜くことはご法度ですが、テオをまだ子供と見て、男は居丈高にこぶしを振り上げます。
「いいじゃねぇか、ボウズ。やらせとけよ」
「この猫たちを狩れるもんならなぁ」
将棋を指していた年寄りたちから、のんびりした声が上がりました。
「よそから来た流れ者かい、この街のしきたりを知らんのは」
「ゴブリンなんぞにやられる初心者か」
「その小さな聖女様は、ここの冒険者たちのお守りじゃ」
「御利益なしで狩りに出て、どんな難儀なめにあうか、試してみても面白かろうよ」
聖女様の猫を喰ったら、どんな災難にあうものか。
やれやれ、やってみろ、と囃し立てられ、男はそそくさと逃げていきました。
冒険者たちは、けっこう縁起をかつぐのです。
みんな、ありがとう、まもってくれて。
でも、最近ゴブリンにやられて怪我をする人が多くなりました。
傷が悪くならないように、はやく治るように、祝福を飛ばすことが増えています。
なんだか、この頃、心配なのです。




