31/50
その31
その31
それから数年、天気が悪く、不作で厳しい年が続きました。
世界のどこかで、魔王が力をふるっているからだと、皆が噂します。
勇者様と聖女様が、仲間を集めて魔王を退治に出かけたそうです。
昔に読んだご本のように、勇者さまたちが魔王をやっつけてくれたら、豊かな実りが戻って来て、みんなが楽になるのでしょう。
でも今は、暮らしはとても大変です。
シトリンの町のそばでも村が二つも消え、農作物が入って来る量が減りました。
河の向こうの掘っ立て小屋の数は増え続けています。
借金奴隷の年期が明けて、ミリィのお父さんのハンスが帰ってきました。
でも体がひどく弱っていて、寝たり起きたりの毎日です。
テオは洗礼式も済み、念願の冒険者見習いになりました。
まずは森の入り口付近で、薬草採取の常設依頼をこなします。
でも魔物の数も増えて来て、町の近くまでゴブリンが出てくるようになったので、気を付けないと、危ないのです。
「行ってきます、聖女様」
ラウスさんからお古のナイフをもらい、意気揚々と出ていきます。
『行ってらっしゃい、無茶をしないで。
無事に帰って来れますように』




