その30
その30
「荒っぽいのが揃っとる冒険者ギルドの傍で騒ぎを起こす方が阿呆じゃわい」
おばあさんが愉快そうに笑います。
怪しい人さらいは、ハンスさんにお金の取り立てを迫った口入れ屋でした。
調べているうちに、ダリアの孤児院を利用した大掛かりな人身売買の組織が浮かび、経営していた教会も巻き込んだ大きな騒ぎになりました。
見目のいい幼い子供たちを集めて、王都で売っていたのです。
かわいいミリィも、ずっと狙われていたのでした。
事件の後、テオはミリィの面倒をよく見るいいお兄ちゃんになりました。
ラウスさんは冒険者を止めて、町の警備隊に入りました。
この町生まれで前科がなく、推薦者が三人という条件は、おばあさんたちの保証で軽くクリアしました。
この歳で新兵の訓練はきついが、この手で町を守りたいから、と頑張っています。
わたしの前で真っ赤になってエリアに求婚して、テオのほんとのおとうさんになったのです。
もう職人も数が減って空き家が多くなっとるからと、おばあさんの薦めで、小さなミリィも引き取って、一緒に長屋に住むことになりました。
テオはやっぱり冒険者になりたい、と、毎日ギルドを覗きに行きます。
洗礼式がすんだら、冒険者見習いになるのだそうです。
今年の冬は厳しく、パンと薪の値段が上がって、エリアさんはやりくりに苦労しています。
橋の向こう、町を囲む塀のそぱに、掘っ立て小屋やテントが増えています。
食い詰めてシトリンの町に流れて来た、貧民たちです。
小さな子供の姿も見えますが、わたしの力は橋のむこうまで届きません。
『どうか、みんなが無事に冬を越せますように』
どうか、わたしの願いがお空にとどきますように。




