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街角聖女 木彫りの小さな聖女像のお話  作者: 葉月秋子


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29/50

その29

その29



「まてーっ!人さらいっ!」


 叫んでテオが走りますが、距離がありすぎます。

 ミリィを抱えた男は、職人街を駆け抜けます。

 ああ、もうちょっとで、わたしの手が届かなくなってしまいます。


 その時。


 通りの端にある馬車屋の屋根から、大きな虎猫が男の頭に飛び降りました。

 ここらの猫たちのボス猫です。


「わっ!」


 片手でミリィをかかえ、片手でその口を塞いでいる男は、避けることが出来ません。

 ミリィを放り出して顔を守ろうとしますが、ボス猫は帽子と首巻を爪に引っ掛けて飛び離れます。


 禿げかけた頭にみそっ歯の、特徴のある顔が剥き出しになりました。


 猫は戦利品の上で「ふぎゃおーーーっ!」と凄い声を張り上げ

 投げ出されたミリィは大声で泣き出しました。



 将棋をさしていたお年寄りたちが気が付いて立ち上がり

 「なんだなんだ」と人々が家から顔を出し

 テオが追い付いて、ミリィに駆け寄ります。


「誰か来てっ!人さらいだよーっ!」


 

 男はちっ、と舌打ちして、大きなナイフを取り出してテオに向けます。


「そのガキをこっちに渡しやがれ!」


 でもテオに気を取られているうちに、忍び寄ったボス猫が後ろから飛びつき、剝げかかった頭に鋭い爪を突き立てました。

 ぎゃっと叫んだ男から飛び降り、毛を逆立ててうなります。

 さすが歴戦の勇者、喧嘩慣れしたボスです。


 その頃には冒険者ギルド内の酒場に昼間っからたむろしていた男たちも出てきました。


「なんだぁ、往来でぶっそうなもの振り回しやがって」

「俺たちの町で、人さらいだとぉ?」

「見た顔だなぁ、こいつ」


 形勢不利、と身をひるがえし男は逃げ出そうとしましたが

 冒険者の一人が手にしていた酒杯を軽く投げつけると

 投擲スキル持ちなのか、スパーンと後頭部に命中して、男は昏倒。



 皆にぼこぼこにされて、警吏の所にひっぱって行かれました。

 



 


 



 

 


 



 

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