その28
その28
「行ってきます、聖女様」
「今日も一日、お守りください」
『いってらっしゃい、気を付けて』
冒険者たちが、お仕事に出かけた昼下がり
見慣れない人が職人街に入って来ました。
帽子を深くかぶり、首巻の布で鼻まで覆いかくし、品物を見るでもなく、注文をするでもなく、きょろきょろとあたりを探っています。
なんだか嫌な感じがします。
青いマントをいっぱいに広げて、前の広場を包み込みます。
うふふ、わたしもすこし成長したみたいです。
たくさんの人が毎日挨拶してくれるので、ちいさな両手も、ちいさなマントも、少しだけ広げられるようになったのです。
嫌な感じの人は、マントの中が良く見えないようで
道なりにこっちへ来ようとするのですが、何となく足が違う方へ向かってしまいます。
早くどこかに行ってくれないかな。
あ。
冒険者ギルドの方から、テオが戻ってきます。
わたしの傍で猫と遊んでいたミリィが、テオを見つけて立ち上がりました。
「テオにいちゃん」
テオを迎えに、広場から走り出して行きます。
ああ、だめ!
広場から出てしまったら、わたしの力は届きません。
走る幼い少女の金髪が揺れます。
嫌な感じの人が、はっと気づきました。
すばやくあたりを見回すと、後ろからミリィに追いついて手をのばし、がっ!と横抱きに抱えました。
「ミリィっ!」
テオが大声で叫びます。




