その20
その20
商人たちが住む地域で、大きな火事がありました。
大きな商家の若い主人が大やけどをして、その家の女中をしていたエリアが放火犯人として捕まったのです。
放火は死罪と決まっている大きな罪で、その子供も七歳の洗礼式を終えていれば、連帯責任を取らされて奴隷落ちになります。
この子は五歳。洗礼式前だったので、罪に問われることなく、引き取る親戚もいなかったので、孤児院へ送られるところだったのです。
エリアは牢の中で、無罪を訴え続けているそうです。
「あの晩遅く、主人には客があったと。
客間で話声が聞こえたと言うんだ。
そして、気付いた時には、火が回っていたと。
だが誰も、客の姿を見ていない。
そして、エリアが若い主人に懸想していたといううわさがあった」
かなわぬ恋に、無理心中を図ったのだ、と言われたのでした。
「ちがう!母さんは、そんなことしていない!」
男の人は苦しそうに答えます。
「ああ、エリアはそんなことするような娘じゃない」
幼なじみなんだ、とうなだれました。
「ここで一所に遊んだ仲だ」
「商家の旦那の容態はどうなんだい?」
「ひどい火傷で、もう意識がない。
旦那が亡くなったら、放火の上に殺人罪だ」
手柄を立てたい官憲が、証拠も無しにエリアに罪を押し付けやがった。
と唇を噛みます。




