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街角聖女 木彫りの小さな聖女像のお話  作者: 葉月秋子


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その16 子供

その16


 大人の人たちが小さな子供を追いかけています。

 とてもすばしっこい男の子です。

 兵士の手をかいくぐり、太った人の足の間をすり抜け、荷馬車の下に逃げ込みます。


 あ!


 逃げ込んだと見せて、反対側から飛び出して、河っぷちの土手の向こうに飛び降りました。

 大人たちは気付かずに、まだ荷馬車の周りを探しています。



「いったい何の騒ぎですかね」


 気付いたおばあさんが、家から出て来て声をかけます。



「子供を見なかったか」

「五歳のガキだ」

「ダリアの孤児院に送るはずが、逃げ出しおった」


 大人たちがいまいましそうに話します。

 太った人は寒いのに汗をいっぱいかいて怒っています。



 ・・・みつかったらとんでもなく怒られそうです。



「あんれまぁ、ごくろうさんなことでございますです」


 おばあさんはわざとらしくゆっくり挨拶して、家に戻って行きました。



 大人たちはお昼過ぎまでそこらじゅうを探し回って、くたびれて腹を立てて帰って行きます。



 午後からは、小雨が降り出しました。


 

 薄暗くなった頃、子供が土手から上がってきました。


 泥だらけで、ずぶぬれで、ガタガタ震えています。


 雨をさけて、わたしの差し掛け屋根の下に入って、人目に付かないように台座の影にうずくまります。



 わたしは青いマントをひろげて、子供を包み込みました。


 子供ははっとして頭を上げます。


「・・・あったかい・・・」


 魔道ランプに灯がともり、私の姿を照らし出します。


 子供は深く頭を下げました。


「聖女さま、一晩お守りください」



 風邪をひかないように、悪いものが入らないように。


 やって来た猫たちと共に、一晩ここで安全に。


『ここでゆっくり、おやすみなさい』


 みんなを中に入れ込んで、わたしはそっとマントを閉じます。



 



 


 




 

 


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