少年よ、冒険者となれ!
エドワードは人を食ったような雰囲気を薄めつつ切り出した。
「君達、冒険者になる気は無いかね?」
「ぼーけんしゃ?
たんけんか、ぐーるたい!」
少年はエドワードの言葉を聞いて目を輝かせながら声をあげた。
その際に手を思いっきり振り上げ、少年に抱き付いていた異形の顔をペチンと叩いたのだが少年は気が付いていない。
異形も少年から叩かれても何も感じて居ないようだ。
いや、少年の手に甘えるように頬擦りをしている。
案外、少年から触れられて嬉しく思っているのかもしれない。
表情は恐ろしいままだが。
因みに少年が言った言葉、『探検家グール隊』とは平日の午後5時に放映されていた幼児向けのアニメーションである。
内容は主人公であるグール達が大陸を歩き回り出会った困っている人を助けたり、悪い人を懲らしめたりする物である。
幼児向けにしてはグロテスクな表現が多く保護者から苦情が来る曰く付きの物である。
「どうですか?
冒険者になってみませんか?」
エドワードは少年が冒険者という事を理解してなさそうだとは思いつつ、再度尋ねてみた。
「エドワードギルド長!
オソレガミ君はまだ幼い少年ですよ。
何を考えているのですか?」
リマロは少年と異形の一歩前まで来てエドワードの前に立ち塞がった。
これは幼い少年を危険な場所に送る事を阻止しようと行動したのだ。
と、言えればいいのだが実際は違う。
領主が客人として迎えているのだ。
リマロは領主が少年と異形を囲い込むだろうと推測しギルドの引き抜きを警戒したのだ。
もし、このまま引き抜かれれば自分の失態にされてしまうと思い込み行動したリマロであった。
確かに、囲い込みまではしなくとも厄介な恩人を外に放流せずに目の届く場所に置こうとした領主である。
似たような事はするだろう。
「はい、確かに年齢は幼いでしょう。
しかし、冒険者は年齢による制限はありません。
さらに最初は星一つから開始ですから受けられるクエストも比較的、安全なものが主です」
エドワードはリマロにそう伝えた。
冒険者には年齢制限が無いと言うが幼い少年に出来る事があるのだろうか?
「ですが………」
なおも食い下がろうとするリマロを牽制するかのようにエドワードは口を開く。
「そして決めるのは彼です。
例え、領主様の執事であろと口を挟む事は許しません。
いいですね?」
エドワードはもっともらしい事を言っているが少年の才能が目当てで有り、彼を冒険者にすれば研究の助手を頼めるという思惑を持っているからだ。
とても真剣な表情をしてリマロを睥睨しているが中では今後の研究がどれほど進むか心を弾ませているのであった。
それは絶対に少年を冒険者にするという自信の表れだろう。
出来ればその背後に居る異形をも冒険者にすれば儲け物とまで考えている。
普通は大人を冒険者に勧誘しそのオマケで子供も冒険者として得る事がある。
まさに逆である。
そんな欲望に塗れたエドワードの気迫に押されたのかリマロがスゴスゴと下がっていく。
「さて、オソレガミ君。
君は冒険者にならないかい?」
エドワードが再度、少年を勧誘する。
「ぼーけんしゃさんは、なにをするひとなの?」
少年は先程のリマロの行動が気になるのか冒険者の役目を不安そうにエドワードに聞いた。
その少年の態度に反応したのか異形が敵意の篭った視線をエドワードに向ける。
そしてその黒く異様に長い髪がエドワードの方に近寄っていく。
「冒険者は、人を助ける事をするよ。」
エドワードは自分の足元の方に異形の伸びて来る髪を尻目に少年に冒険者が何をするのか言い出した。
「ひとを、たすける?」
「そう!
人から頼まれた事をしてお金を貰う仕事をするのが冒険者です」
異形の髪の毛がエドワードの足に巻き付き始めた。
何故か、エドワードは髪の毛を振りほどかない。
「う〜ん、おてつだいを、するの?」
エドワードの言葉を少年はお手伝いをする、という風に受け取ったようだ。
「確かに星一つから始めますから最初は掃除や荷物の運搬をします」
どんどん強くなる締め付けに耐えながらエドワードは獲物を仕留めるかのように少年に説明をする。
「ぼくにもできるの?」
「えぇ、出来ますよ。
後ろの貴女も冒険者になりませんか?」
エドワードは脂汗をかき始めた。
よほど痛いらしい。
エドワードは畳み掛けるようにして少年に言った。
ついでとばかりに異形も冒険者に誘う抜け目の無いエドワードであった。
少年は少し考えるように目を瞑ると決心したのか口を開くた。
「うん、ぼく、ぼーけんしゃさんに、なる!
いっぱい、お手伝いするね!」
その言葉が合図になったようで異形の髪の毛は解れエドワードの足から引いて行った。




