思惑するエドワード。
わたしは今、燃え上がるような興奮を覚えている。
周りから良い印象を持てない笑みがもう抑えられない。
件の二人組にギルド長、わたしの書斎まで来てもらった。
今は目の前で立っている。
彼の背後に抱き着くように立つ彼女が『ステータスオーブ』を壊した者か。
この辺りでは見かけない造形の顔だな。
光を吸い込むような黒い髪、陽の光に当たっていないかのような青白い肌、仄かに赤く輝く眼光、一言も話さないと言わんばかりの閉じた口。
黒く体型の丸分かりな薄着を着た豊満な身体。
怪しく、恐ろしく、そして綺麗だな。
夜中に出会えば心の弱い者なら気絶してしまう程の迫力がありそうだ。
彼女のカードは黒く何が表記されているかは彼女しか分からないだろう。
彼女は受け取ろうとはせず止むを得ず彼に渡した。
そして彼女に抱き着かれて立っている特徴のある暗いブロンドの髪の小さく幼い少年である。
顔付きは彼女と似通っている。
こちらは健康を体現したかのような良好な表情であるが。
カードに記名されていた名前はオソレガミ・ミタマ。
そう、家名持ちなのだ。
服は粗悪な物だが汚れやシミ一つ無い。
髪や肌も傷や汚れも見当たらないな。
貴族の御曹司か何かだろうか?
しかし、ミタマという家名の貴族はこの国には居なかった筈だ。
カードを見た限りはパラメータは低いように感じるが素質とレベルが低いせいだと思われる。
しかし、年齢が0と書かれている部分が気になる点ではある。
本来、カードは成人、10歳を迎えると発行する規定である。
しかし例外という者は付き物だ。
わたしも今まで幼くとも7歳の子のカードを発行した事がある。
その時はカードには年齢欄に7と表記されていた。
だが、目の前の少年のカードには0と表記されている。
他にも色々と気になる点があるが今はそれどころではない。
いや、そもそも、壊れた『ステータスオーブ』で通常のカードが発行されるとは考えていない。
カードとは『神の瞳』という神具の劣化生産で作られている『ステータスオーブ』という魔道具で発行される。
『神の瞳』とは全ての人々や物の情報を記録されているとされている神具であると言われている。
それを再現した物が『ステータスオーブ』である。
これは触れた者や物の情報をカードとして出す事の出来る魔道具だ。
しかし、所詮は人が作った物。
一部の者や物には使えないのだ。
出てくるカードは黒く染まり、『ステータスオーブ』は壊れる。
壊れた『ステータスオーブ』はカードを発行するにはもう使い物にならない。
しかし、他の効果を得るのだから面白いものだ。
話をもどそう。
このカードは発行した者や物の状態が変わるとカードに触れた時に表記されている情報も変化するのだ。
変化に時間が掛かる為、彼が持っていてもわたしが見た時と同じ表記しか書かれていないだろう。
しかし、この『ステータスオーブ』は厄介な性能がある。
それは表記される文字が特殊な物なのである。
神言文字という特定の形を持たない文字なのだ。
神言文字の特徴は文字が動くのだ。
しかも、読み手によっては本来の意味が伝わらないという代物だ。
これは神が人々に意思を伝える際に用いられる言葉である。
一種の暗号なのだ。
しかも解読するには特定のスキルか魔道具が必要になる。
学べばスキルや魔道具の必要が無くなるのだが、それには数十年の歳月が必要だと言われている。
現在はクリバラ教の枢機卿、聖女、教皇などの高位の聖職者か一部の賢者、ぐらいのものだ。
わたしも数年前から学び始めたが魔道具無しでは単語一つ読めやしない。
それを彼は読んでみせた。
習得するには数十年もかかるだろう知識を得ていたのだ。
もしかしたら彼も才能のある存在なのかもしれない。
是非、彼をギルドに引き込みたい。
わたしの研究の助手をしてほしい!
彼の話も興味深い物だ。
わたしの聞いた事の無い現象や物がスラスラと出てくる。
幼い口調でスラスラで要領を得ない物も多かったが。
しかし、目を瞠るような考え方の片鱗を感じた。
それは子供の妄想と片付けようと思えない程、具体的な話だった。
本当に、欲しいな。
冒険者の事を教えてみるか?




