騎士団長は目覚める。
窓から微風が吹き込む白を基調とした個室の清潔なベッドの上にある男が横たわって居た。
その男の端正な顔が少し苦しそうに歪み呻き声をあげた。
そして瞼がピクリと動くと静かに開けていった。
「うっ………
ここは………治療室か?」
男は鈍く重い頭で何があったのか思い出そうとする。
目覚めた直ぐであるからか数秒、思い出すのに時間を要した。
まだ頭が十分に働かないのを気力でなんとかしてゆっくりとだが記憶を取り戻し始めた。
「………そうだ。
私は………森に調査に行った。
森の中は………今までに無い程静まり返っていて………そして」
そして男は全てを思い出した。
森に多大な量の魔力を感じた事を。
森の中で使徒と思われる少年とその守護者と思われる化け物を。
最後に、その少年達を討伐しようと勇者が派遣されている事を。
「報せねば、手遅れになる前に」
男は力の入らない身体を無理矢理動かそうとしてベッドから滑り落ちた。
それでも、男は床を這いずるように動いていった。
その様子は普段の彼からは想像も付かない行動であった。
何かに、盲信に取り憑かれたかのように男は少しづつ、力が入らない身体を駆使して移動して行った。
「おや?
おや!?
ランドレイ騎士団長!?
もしやベッドから落ちてしまわれたのですかな!?
今、ベッドに運びますぞ!」
その床を這いずるながら移動する男を発見した者が居た。
そして彼をベッドに運ぼうと近寄った。
「私は………伝えねば………報せねばならない。
手遅れになる前に報せねば!」
先程の身体に力が入らなかったのは演技では無いだろうかと疑ってしまう程、男は暴れ始めた。
その様子はまるで手負いの獣が自身の身体を顧みない程、決死の抵抗を見せるような様子だった。
「暴れないで下され!
おい、誰か、誰か居らぬか!?」
彼を見つけた男は一人では無理だと判断し他者を呼び寄せた。




