森からの脅威が迫る。
少年は館から出て町を彷徨った。
とは言っても見覚えのある道、つまり町の門から館までの道を戻っているだけなのだが。
少年はキョロキョロと町の様子を見回しながら歩いて行く。
来た方向が違えば景色も違うように感じるのだ。
「ふぁーー」
少年は思わず感嘆の声を出した。
今は夕暮れなのも違う景色に見える要因だろう。
夕暮れの町並みも少年が綺麗と思える景色だったのだ。
因みに異形は少年と自身に掛けていた力を解いてある。
館から出た所で解除したらしい。
そして今は異形を引き摺る少年の姿が夕暮れの町中に現れたと言う事だ。
「んぅ、あの子って確か………」
「おぅ、なんか力が強い坊主だな」
「背中のネーチャン、えぇ体してんな」
「おい、あの子はどこの子だ?」
「そんなの知らねぇよ」
「あ、朝の奴らか」
当然、住人の話題になる。
昼頃に領主の館へと行った幼い少年と異形が話題にならない筈が無いのだ。
娯楽の少ないこの世界、目立つ存在の話という物は数少ない楽しみなのだ。
「おい、おまえ!」
「ん?」
そんな中、大人達が遠巻きに話していると少年よりも少し大きな子供が声を掛けて来た。
大人よりも好奇心の強い子供だからこそ出来る行いだろう。
健康そうな小麦色に焼けた肌に悪戯が好きそうなやんちゃそうな男の子だった。
その背後には他にも子供達が居た。
どうやら、目の前の男の子が代表で少年に声を掛けてきたようだ。
誰が好き好んで得体の知れない女を物理的に抱えた幼い少年に声を掛けようと思うのか。
確かに子供以外は少年と異形に声を掛けないだろう。
物好きな大人、幼い子供が好きな者や女に飢えた者なら喜んで声を掛けるかもしれないが。
「おまえ、みたことないな。
よそものか?」
少年へストレートな質問。
これも子供特有の疑問に思ったら直ぐに相手に質問するという好奇心からくる行為である。
「うん、きょう、きたばかりなの!」
少年は正直に答えた。
偽る理由も無く、少年も偽ろうなどこれっぽちも思わないだろう。
「ふーん、そうか。
おれ、ビガロ!
よろしくな!」
「うん、よろしく!
ぼくは、おそれがみ、みたま!」
「オソレガミタマ?」
「ううん。
おそれがみ、みたまって言うの!」
「じゃあ、おまえはオソレガミな!
いっしょにあそぼうぜ!」
「うん!」
これで子供達と遊ぶ事が決定した。
ーーーーー
魔物達が進軍する。
目指すは一つ。
甘い蜜に誘われる虫の如く何かに取り憑かれたように森の中を駆ける。
どうやらもくてきの物に近付いたのか前よりも進軍の速度が上がっていた。




