Lv.20 旅は道連れ?世は非情
ぜぇぜぇと息を吐き、地面に転がる男二人を尻目に、落ちている素材を集めるロマと婆さん。
ちなみに俺は素材とはいえゴキについていたものには触れられず始終応援に回った。
「パ、パーティならば…きょ、協力を」
栗毛のスポーツ刈り男が息切れを起こしながら訴える。
俺はガン無視した!
ゴキは無理だ!
「はぁ…数が多かった」
グウェンは息を整えると起き上がり、ばしばしと服についた砂を叩き落とす。
経験の違いか、スタミナの違いか、スポーツ刈りよりグウェンの方が回復が早いようだ。
まぁ、スポーツ刈りの武器は結構大きな戦斧だから力がいるんだろうけどな。
「で、あんたは何の用だったんだ? こんなとこまでついてきて」
どこかのアニメの姉のように木の影でずっとストーカーをしていたスポーツ刈りを問い詰めると、バツが悪いのか男はうっと詰まる。
「そ、それは、やはり初心者には難しすぎるとだな」
忠告とか?
それならば散々ギルド内で婆さんに言っていたし、危険を承知の上で依頼を受けたのだからこれといって口出しされるいわれはないはずだ。
では…?
首をひねっていると、横から婆さん達が口を開く。
「報奨金目当てじゃな」
「後ろから襲うつもりだったとかじゃない?」
「ここの女性陣は辛辣だぞ」
メルニア婆さん、ロマ、グウェンと続き、グウェンの言葉に「ん?」とさらに首を傾げた。
そういえば木の影に男が隠れているとき、グウェンに言えばその返答は「暑苦しい」「気のせい」と辛辣だった。
初対面でそこまで辛辣に言えるものではない、とすると・・・。
「知り合いか?」
グウェンの冑が首肯し、何か言いかけたところで男が慌てたように背後から飛びついてグウェンの口…の辺りを押さえつけた。
「あ」
どかんっ!
まずい、と思った時にはすでに遅く、男の体は接触恐怖のグウェンによって宙を舞っていた。
「…グウェン、とりあえず飛びつかれたら動きを止めるよう訓練しとけよ…」
でないと俺達の命が危ないような気がする。
「う…努力する」
グウェンは日々特訓である。
まぁ、脱・鎧だけでも大きな進歩だ。気長に見守ろう。
「で、あれを知ってるのか?」
俺は遠くにぐしゃりと音を立てて落ちた男を見やり、尋ねた。
グウェンは頷き、大きくため息をつく。
「あれは、ギルドでも結構有名な魔物ホイホイだ」
・・・・ネーミングからして嫌な感じしかしねぇな。
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結局気絶した男の足を掴みずるずると引きずりながら俺達は進む。
その間、グウェンから男に関する情報を聞き出すことになった。
「名前はガルフォード。20代の頃にふらりとギルドにやってきて登録し、現在35か6だな。一所にはとどまらずあちこちのギルドを転々としている」
「へぇ、行動範囲が広いのか」
20代の頃からというならば、10年近く世界各地を歩き回っていることになる。ベテランだ。
そう思い頷いていると、グウェンが首を横に振った。
「王都、地方、王都、地方を繰り返しているだけだ。地方も行くところは大抵同じ。とにかくどこにとどまるにしても約1か月程度。それ以上は苦情が来るそうだ」
約1か月暑苦しいのが滞在するから苦情とか?
そんなはずないよな。暑苦しい外見の旅人なら他にもいたし。
だとすると、あの暑苦しい性格がまずいとか?
「仲間は?」
性格に何か問題があってということなら仲間もいないだろうなと尋ねれば
「いない」
即答された。
本当に嫌な感じだ。何がこの男を忌避の対象にするのか。
悩んでいると、グウェンが続ける。
「昔はいたらしい。だが、皆もたないそうだ」
「? もたない? こいつといるとイライラするとか?」
やはり性格的に問題が?と思えば、そうではないらしい。
じゃあ何がと尋ねようとしたところで、珍しく再びモンスターに取り囲まれた。
今度は精神攻撃を得意とするゴーストタイプだ。ゆらゆら揺れる煙のような姿は精霊を思い起こさせる。
俺は男を引きずっていた足を離し、構えた。
「これといると四六時中魔物に襲われるため、精神的にもたないんだそうだ。ちなみにこいつは年中不眠症だ」
それで付いた通り名が魔物ホイホイ。
てことは…
「このモンスターもか…」
目の前のゴーストタイプを見てガクッと肩が下がった俺は、はっとして顔を上げた。
まさか…
「ゴヒツジもこいつのせいじゃないのか!?」
「…数が多かったからそうかもな…」
やはり~!
俺はゴルベーザ(注:ガルフォードです)をすぐに捨てて行こうと決めたのだった。




