Lv.19 VS ゴヒツジ
「と、いうことで、うちのパーティーには資金がいる」
目をグリグリこするロマと、起きてるのか寝てるのかはっきりしないグウェン、それから目が覚めたらしいメルニア婆さんを交えて、ギルドにて朝食をとりながら、これからについての話し合いだ。
「アキには魔王を倒してもら…」
「婆さんの理想は置いといて、俺もランクアップしてこの世界で生きられる基盤を作りたい。無理にとは言わないが協力してくれないか?」
婆さんの言葉はぶった斬り、はロマとグウェンに向けて話す。
特にグウェンは緑の騎士として個人で動いているようなので、無理強いはできない。
「アキは私のマスターだもの。協力するのは当然よ」
ロマはにっこりほほ笑み、俺に頷いてくれる。
俺はほっと安心してグウェンを見るが、表情は一切わからないので返事を待つしかない…
「・・・」
「・・・・・・」
「寝ておらんか?」
メルニア婆さんが返事をしないグウェンの冑を勢い良く杖で殴った。
カ~ンッ!
フライパンを叩いたような音が響き、ギルドでまだ寝ている男達がなんだなんだと飛び起き、俺は慌てて周りに謝る。
ふっ…なぜか俺が謝るあたり、日本人の悲しい性よな…。
「朝か…」
グウェンがボソッと呟いたので、テーブルに着くまでの動作は寝ぼけてただけかと突っ込みたくなる。
この感じだと、ドラゴン説得の依頼を受けようと思うという始めの話から聞いていないようだ。
俺は仕方なく、かなり端折って金がないからドラゴンの説得を受けようと思うと話し、地理や敵にまだ詳しくないので手伝ってもらえないかと聞いてみた。
「わかった…今のところ特に急ぎの用もないので手伝おう」
頷く冑に礼を言うと、俺達はぱぱっと食事を済ませ、さらに話し合った結果、宿に泊まるお金もあまりないのだからということですぐに出発となった。
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「あ~気のせいですかねぇ、グウェンさんや」
目の前に現れた初心者向けモンスター、青トカゲ(青い色をした全長約60センチのトカゲ、特殊能力は無し)なるものに遭遇し、少々数が多いなと言いながら倒している最中、俺は視線を感じてちらりと目をやり、見てはいけないものを見てしまった。
「気のせいだ。あんな暑苦しいものはいないものと思う方が良い」
確かに暑苦しい印象を受ける顔ではあるが、鎧のグウェンを思うとどっこいどっこいじゃないかと思うのは俺だけか?
チラリと視線を向けた木の影、そこには、昨夜メルニア婆さんと依頼書で張り合った栗毛のスポーツ刈り頭をした大柄の戦斧使いが、木の影に隠れきれずはみ出した状態でこちらを窺っていた。
さわらぬ神に何とやら、だ。
俺達は難なく青トカゲを一掃し、倒した後に現れた素材らしきものを拾って袋に詰める。
マメ知識だが、弱いモンスターは数が多い分素材がたくさん集まる…というわけではない。
じつは、弱いモンスターには何十匹か何百匹に一匹だけ素材を出すリーダー格がおり、それを倒さないと素材は出ないのだ。
だから、弱いモンスターと言えども素材の売値は結構いい。
「意外と多かったわ」
ホクホクしながらロマが素材を入れた袋を振り、俺達は先へ進む。
かなり後ろが気になるが、まぁ、何がしたいか言ってくるまでは放っておいても大丈夫だろう。
大丈夫・・・・・とは言えなくなった。
王都からレピド村まで何事もなく歩いて訳2時間。そう遠く離れてはいないのだが、その途中にオークやゴブリン…のような生き物が生息している森があり、彼等はとても温厚なのだそうだが、ごくまれに現れるゴヒツジなるモンスターが危険なのだそうだ。
で、現在森の3分の1を踏破したところで、そのゴヒツジに出会った。
しかも大量。
見た目? 見た目は羊のふわふわな毛をもつ体長30センチはあろうというゴキブリだな…。
顔だけテカテカで毛がないところがさらに気持ち悪い…。
「スイマセン、俺には無理そうだ」
ゴキブリというだけですでに拒否反応が…
ゴヒツジを見つめながらじりじり下がる。
「バカを言うなアキ、あれは中級モンスターだぞっ、あんな大軍を私一人で幼子を守りながらさばけるかっ」
幼子って言うのはロマのことだな…
俺より強いぞその幼子。そして、守るのがメルニア婆さんのことは言わない辺りわかってるなグウェン。
それはともかく
「俺にゴキブリが相手できるわけないだろう! あれは菌の温床だぞ!」
ぞわぞわと走る悪寒にブルリと身震いする。
「意味が分からんっ。戦えないなら魔法を使え!」
なるほど。その手があったとばかりに氷の槍を作り出し、投げつける。
ここは森の中なので炎系の魔法は使えないのだ。
とりあえず串刺しで…と結構な速さで投げたにもかかわらず、奴はシャカシャカと音を出しそうな勢いで回避した。
「うおぉぉぉぉぉっ…キモいっ、キモ過ぎるっ」
恐ろしいので目は話せないが、その場にガクリと膝をついて泣きたい心境だ。
そして・・・・
「だから初心者は危険だと言ったんだ!」
木の影からこっそり見ていた男が遂に飛び出した。
いつもなら何かしら突っ込む俺だが、ゴキブリ相手だ、仕方ないっ。
ここは…
「よしっ、頼んだ!」
ぽんっと男の肩を叩くと、そのまま先ほどまで男がいた木の陰に隠れ、主に従うというロマが続き、ついでに男と討論したせいか、メルニア婆さんも補助魔法を放棄。
俺達三人が木の陰に隠れ、二人を応援する構図になった。
「お前たちそれでも冒険者かー!?」
男の叫び声が上がる。
初心者ですからー。とはとりあえず言わずにおいた。




