lv.18 依頼書
ちょっとばかし恐ろしい目にあったが、なんとかクリア。
男が悲しい生き物だと再認識したものの、久しぶりにシャワーを浴び、俺は上機嫌でギルドの一階に降りた。
そこでは、なぜか冒険者達を巻き込んだ壮絶な依頼書バトルが始まっていた。
「だ~か~ら! 初心者にこの依頼はやべぇって言ってんだろうが婆さん!」
「何を言うかー! これくらいをこなせず伝説の冒険者になどなれんぞ!」
メルニア婆さんのセリフが伝説の勇者から伝説の冒険者になってるし…。
一つのテーブルに、実に10人以上のむさ苦しい男達が集まり、白熱している。まぁ、半分ぐらいは野次馬のように暇つぶしで見物しているだけのようだが。
とりあえず、遠巻きにそれを見ていたグウェンを見つけ、俺は駆け寄った。
「何がどうなった?」
グウェンははっとしたように顔を上げた。
冑でまったくわからなかったのだが、どうやら立ちながら眠っていたらしい。
まぁ、深夜だからな…。
「えぇと、あぁ、そうだ、確かアキの依頼をどれにするか選ぼうという話になったんだが、巫女が最低ランクの中でも最も難しいだろう依頼を持ってきて、話し合ううちにあの男が乱入してきてな」
グウェンが指し示すのは現在婆さんと白熱した討論をしている大柄の男だ。
巨大な戦斧を背に背負った栗毛のスポーツ刈り男は、緑の目の周りを寝不足で赤くし、明らかに寝不足である様子で騒いでいる。
「アキ…眠いわ」
冒険者達の輪の中からロマが抜けだし、俺の脚にピトリとくっつくので、俺はロマを抱き上げてやる。
「とりあえず宿を…て、深夜かぁ。宿開いてるかな?」
地球でのホテルならば深夜でも受け付けがいればチェックインできるが、ここは異世界。日の出とともに起き、日の入りとともに眠るような場所だ、ギルドは24時間だが、宿屋はどうだろうと考える。
「ギルドの御用達の宿なら開いているだろうが、あれが収まるかどうかはわからないし…。いっそここで眠るか?」
グウェンの言うとおりだ。幸いここにはベンチらしきものも壁際に並んでいるし、眠れないこともない。綺麗か汚いかはこの際置いといて、仮眠ということで少しでも眠ったほうが良い気がする。
問題は、婆さんとあの男の騒がしさだが…。
「とりあえずあれは放っておいて仮眠をとるか」
どうせ朝まで数時間という話だ。朝を待って宿をとり、それからどうするかを決めればいい。
決定すると、グウェンはさっさとベンチに寝そべり、俺もロマとともにベンチへ向かった。
・・・・のだが
「私はアキと一緒に寝るわ」
「いやいやいや…それは俺が変態に見られかねないし」
既に手遅れな所は無きにしも非ずだが、とにかく少しでも正常に戻りたいではないか。
ベンチもそれほど大きくないしとすったもんだしたが、ここでロマがうるっと目に涙を浮かべた瞬間、スキル・幼女好きが発動した!
「よし、一緒に寝ような。ロマは俺にくっついて眠るといいぞ」
心にもないセリフが出たー!
「ありがとうアキっ」
気がつけば、俺はロマをぴったりと抱き寄せて眠るのだった・・・。
恐るべし幼女好きスキル…。ていうかスキルなのか? 呪いじゃなくて?
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翌朝
騒々しい中でも何とか眠りに落ちることができた俺は、朝日を顔いっぱいに浴びて目を覚ました。
ロマがくっついたままだったので身動きが取れず、おまけに眠った場所は何も敷いていない木のベンチ。バキバキする体をほぐしながら起き上がると、討論していた席では、老婆と大柄の男がともに仲良く突っ伏して眠っていた。
結局疲れて眠ったのか、と二人をよくよく見れば、どちらも白目を剥いている。
さすがはギルド…。
きっとうるさすぎて耐え切れなくなった誰かが力づくで黙らせたのだろう。
とりあえず見なかったことにする。
と、そこで気になったのは二人が討論していた依頼書の内容だ。
俺はロマを起こさないようにそっとベンチを抜け出して移動し、依頼書を手に取った。
『ハルモニアのドラゴン説得:E ランク』
ドラゴン退治ならぬドラゴン説得…。
なんだろう、このサーガ的人生からとことん外れていくような感覚は。
遠い目をして少し現実逃避したところで内容に目を通す。
『ハルモニアのレピド村にドラゴンによる命にはかかわらない地味な病が発生。
村より徒歩1時間の山奥に住む赤竜の説得をお任せしたい。
報酬:3万リン』
1リン=1円なので、3万円の報酬ということだ。
俺はその依頼書を持って、同じEランクの他の依頼書を確認する。
高額で千がいい所だろうか。となると、3万リンはかなりの破格値だ。
婆さんやロマを抱えて活動するなら、資金がいるしなぁ…
俺はしばらく依頼書の前で唸った後、「よし」と声を出して顔を上げた。
ダメで元々、当たって砕けろだ。




