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第三話 鳴神の記憶――鬼王を知る者

### 前書き


 旧地獄の最奥。


 黒嶺轟羅、星熊勇儀、そして鳴神雷華。


 三人の鬼は、地底深くに眠る古代の封印と対峙していた。


 その封印の向こうには、かつて鬼族を支配したという存在――鬼王が眠っている。


 しかし、轟羅には一つの疑問があった。


 なぜ雷華は、そこまで鬼王について詳しいのか。


 単なる古い伝承を知っているだけなのか。


 それとも――。


 雷華自身が、鬼王と何か深い因縁を持っているのか。


 今回は、その謎が明らかになります。


---

# 東方Project 二次創作 外伝 鬼の大戦鬼


## 第三話 鳴神の記憶――鬼王を知る者


 石碑の前。


 三人の鬼は、しばらく動かなかった。


 地底の奥から響いていた声は、すでに消えている。


 しかし、その存在感だけは残っていた。


 空気が重い。


 まるで巨大な何かが、石碑の向こう側からこちらを覗いているようだった。


 轟羅は石碑を睨みつける。


「……雷華」


「何だ?」


「一つ聞きたい」


「何でも言ってくれ」


 轟羅は拳を握った。


「なぜ、お前は鬼王のことをそこまで知っている?」


 雷華は黙った。


 勇儀も雷華を見る。


「私も気になっていたよ」


「古い伝説を知っているだけにしては、詳しすぎる」


「封印の場所まで知っていた」


「それに、さっきの雷のことも……」


 雷華はしばらく沈黙していた。


 やがて、ゆっくりと口を開く。


「……鳴神家は、代々この地底を監視してきた」


「監視?」


 勇儀が聞き返す。


「ああ」


 雷華の指先に、小さな雷光が灯る。


「私の一族には、他の鬼たちには伝えられていない記録がある」


「古い記録だ」


 轟羅が問う。


「そこに鬼王のことが書かれているのか?」


「そうだ」


 雷華は頷いた。


「ただし、単なる伝説ではない」


 雷光が、雷華の指先から地面へ落ちる。


 ――パチッ。


 雷が地面の中へ消えていく。


「鳴神家の役目は、鬼王の封印を監視することだった」


「昔、鬼族が鬼王を封じた時からな」


 勇儀の表情が変わる。


「じゃあ、あんたの一族はずっと……?」


「そうだ」


 雷華は答える。


「何百年も、何代も」


「封印に異常がないかを確認し続けてきた」


「なぜ鳴神家が?」


 轟羅が尋ねる。


「私たちの能力が、封印の状態を知るのに適していたからだ」


 雷華の周囲に雷が走る。


「私たちの雷は、ただ空から落とすだけではない」


「地中を流れる妖気を感じ取ることができる」


「封印というのは、ただ石や術式で作られているわけではない」


「そこには大量の妖力が流れている」


「その流れを、雷を通して読む」


 轟羅は納得したように頷いた。


「だから、地底から発生していた雷を追っていたのか」


「そうだ」


 雷華は答えた。


「数十年前から、異常が始まった」


「地底の奥で、今まで存在しなかった雷が発生するようになった」


「最初は小さな異常だった」


「だが、年を追うごとに強くなっていった」


 勇儀が腕を組む。


「それで、鬼王の封印が弱まっていると判断したわけか」


「違う」


 雷華は首を横に振った。


「最初は、私もそう思わなかった」


「……?」


「封印が弱くなっているだけなら、妖力の流れが乱れる」


「だが、今回の現象は違った」


「まるで――」


 雷華が石碑を見る。


「封印の内側から、何かが雷を押し返していた」


 轟羅の目が鋭くなる。


「つまり……」


「中にいる存在が、封印に干渉している」


「そういうことだ」


 雷華は答えた。


 勇儀が小さく息を吐く。


「なるほどね」


「それで、鬼王が生きていると?」


「……それだけじゃない」


 雷華の表情が変わった。


「私は一度、奴の声を聞いている」


「声?」


 轟羅が聞き返した。


「ああ」


 雷華は目を閉じた。


 そして――。


 遠い過去を思い出す。


 ◆


 数年前。


 鳴神家の地下神殿。


 そこには巨大な雷石が置かれていた。


 壁一面に古代の鬼文字が刻まれている。


 雷華は一人、その場所に立っていた。


『封印、異常なし』


 古い記録を確認する。


 いつも通りだった。


 だが、その日は違った。


 雷華が手を伸ばす。


 指先から雷を流す。


 青白い電光が地下へ走っていく。


 そして――。


 雷華は感じた。


 何かがいる。


 地底の遥か彼方。


 巨大な妖気。


 冷たい殺意。


 そして――。


『……まだ……終わっていない……』


「……!」


 雷華は息を呑んだ。


 雷が一斉に消える。


 神殿が静寂に包まれた。


「誰だ……?」


 返事はなかった。


 雷華はもう一度、雷を流した。


 すると――。


『……鬼は……再び……我が前に集う……』


 低い声だった。


 地面そのものが喋っているようだった。


 雷華は拳を握った。


「鬼王……」


 その名前を口にした瞬間。


 地下神殿全体が震えた。


 そして声が返ってきた。


『……我を知るか……』


「鳴神家の者だ」


『……鳴神……』


『……まだ残っていたか……』


 雷華の背筋に寒気が走った。


 伝説ではない。


 記録でもない。


 目の前にいる。


 封印の向こう側に――。


 鬼王は確かに存在している。


『……封印は……いつか砕ける……』


「させない」


 雷華は即座に答えた。


「私は、お前を外には出さない」


『……一人で……何ができる……』


「一人ではない」


 雷華は拳を握った。


「私の一族がいる」


『……そうか……』


『ならば……待とう……』


『我が復活した時……貴様らの一族から……血祭りにしてやろう……』


 そこで声は途切れた。


 雷華は長い間、動けなかった。


 そして、その日から――。


 雷華は鬼王復活を阻止するために動き始めた。


 ◆


 現在。


 雷華は目を開いた。


「それが、私が鬼王を知っている理由だ」


 轟羅は黙って聞いていた。


 勇儀も真剣な顔をしている。


「……実際に声を聞いたのか」


「ああ」


「それなら、確かに伝説なんかじゃないね」


 勇儀が呟く。


 轟羅は石碑を見る。


「そいつは、私たちを待っていると言った」


「そうだ」


「ならば、こちらから会いに行けばいい」


 雷華が振り返る。


「まだ封印を破るわけにはいかない」


「分かっている」


 轟羅は笑った。


「だから、封印の外で鍛える」


「奴が出てきた時に――」


 拳を握る。


「一撃で叩き潰せるようにな」


 勇儀が大笑いする。


「はははは!」


「やっぱりあんたは最高だよ、轟羅!」


「何がだ?」


「鬼王が世界を滅ぼすかもしれないって話をしてるのに、考えてることは拳のことばかりだ!」


「鬼だからな」


「違いない!」


 雷華も苦笑する。


 しかし、その時だった。


 ――ドン。


 三人の笑い声を遮るように、地面が震えた。


「……!」


 雷華が石碑を見る。


 石碑に刻まれた文字の一部が、赤く光った。


「これは……」


「何だ?」


 轟羅が尋ねる。


 雷華は文字を読む。


「……封印の外側に、別の反応がある」


「別の?」


 勇儀が尋ねる。


「鬼王の封印とは違う」


 雷華が目を細める。


「誰かが、この場所へ近づいている」


 轟羅が笑う。


「新しい鬼か?」


「分からない」


 雷華は雷を纏う。


 すると――。


 洞窟の奥から、赤い光が見えた。


 次第に大きくなる。


 熱気が押し寄せてくる。


「……この妖気」


 雷華が呟く。


「知っているのか?」


 勇儀が聞く。


「いや」


 雷華は首を横に振る。


「だが――」


 赤い光が、さらに近づく。


「強い」


 轟羅の口元が吊り上がった。


「そうか」


「なら、歓迎しよう」


 赤い光の中から、一人の女鬼が姿を現した。


 燃え上がるような赤髪。


 鍛え上げられた身体。


 額には一本の角。


 その瞳には、激しい炎が宿っている。


「――ずいぶん楽しそうじゃないか」


 女鬼が笑う。


「こんな地底の奥で、三人も鬼が集まっているとはね」


 轟羅が前へ出る。


「お前は誰だ?」


 女鬼は拳を鳴らした。


「私か?」


 赤い炎が拳を包む。


「紅蓮寺――」


 炎が一気に燃え上がる。


「焔羅だ」


 雷華の表情が変わった。


「……紅蓮寺」


「知っているのか?」


 勇儀が尋ねる。


「鳴神家の記録に名前がある」


 雷華が答えた。


「古い鬼族の一族の一つだ」


 焔羅が笑う。


「なるほど」


「鳴神の鬼か」


 雷華が構える。


「お前も、この異変を感じて来たのか?」


「異変?」


 焔羅は笑った。


「そんなものはどうでもいい」


 そして轟羅を見る。


「私がここへ来た理由は――」


 炎がさらに激しくなる。


「強い鬼の気配がしたからだ」


 轟羅の目が輝いた。


「……そうか」


「ならば――」


 拳を構える。


「話は早い」


 勇儀が笑う。


「おいおい、また始めるのかい?」


 雷華が呆れたように言う。


「轟羅」


「何だ?」


「今は戦っている場合では――」


「雷華」


 轟羅が笑った。


「鬼に強い奴が現れて――」


 拳を握る。


「戦わない理由があるか?」


 雷華は黙った。


 勇儀は大笑いする。


「ないね!」


 焔羅も笑った。


「面白い!」


「そういう鬼は嫌いじゃない!」


 地底の最奥。


 鬼王の封印を前にして――。


 四人の鬼が対峙する。


 その瞬間。


 石碑の奥から、再び声が響いた。


『……集まる……』


『……鬼が……集まってくる……』


 誰も気づいていなかった。


 鬼王の封印が――。


 先ほどより、わずかにひび割れていたことに。


 そしてこれは。


 後に「鬼族の大戦鬼」と呼ばれる者たちが、初めて一つの場所へ集まり始めた瞬間だった。


---



### 後書き


 第三話を読んでいただき、ありがとうございました。


 今回は、鳴神雷華が**なぜ鬼王の存在を知っているのか**を具体的に描きました。


 雷華が鬼王を知っている理由は、


 **鳴神家が代々、鬼王の封印を監視してきた一族だったこと。**


 そして、


 **雷華自身が過去に封印の向こう側から鬼王の声を聞いていること。**


 この二つが大きな理由となっています。


 さらに、雷華の「雷を操る程度の能力」には、単純な攻撃能力だけではなく、**地中を流れる妖気や封印の状態を雷によって読み取る力**があるという設定を加えました。


 これによって、雷華が異常な雷を追って黒嶺洞までやって来た理由も繋がります。


 そして今回の最後では、新たな大戦鬼――**紅蓮寺・焔羅**が登場しました。


 焔羅は鬼王を追ってきたわけではありません。


 彼女が求めているのは、強者との戦い。


 つまり轟羅とは非常に相性の悪い……いや、良すぎる鬼です。


 轟羅、勇儀、雷華、焔羅。


 異なる目的を持った鬼たちが、少しずつ一つの場所へ集まり始めます。


 しかし、その裏では鬼王の封印が確実に弱まりつつあります。


 次回からは、**紅蓮寺・焔羅の過去と能力、そして彼女が「鬼族の大戦鬼」と呼ばれる理由**を掘り下げ

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